【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の弐 「慎重を勇猛に代えて」

カテゴリ:特集

小宮良之

2015年01月22日

日本人的特性とはすべてが悪なのだろうか。

指揮官が指揮を高められれば、日本人は特有の強さを見せる。うまくハマりさえすれば、各国から称賛された2013年のコンフェデ杯のような力を出すことも可能だ。(C) Getty Images

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 しかし、日本人的特性とはすべてが悪なのだろうか?
 
 日本人には欧州や南米の選手のような奔放さはない。だが実直に戦いに挑み、堅実に仕事を遂行し、そのなかで自信を付け、着実に成長できるというポジティブな特質も持っている。
 
 昨年に台頭目覚ましいシーズンを送った山形は、その好例ではないだろうか。
 
 山形の選手たちは、J1昇格プレーオフや天皇杯で奮励努力するなか、徐々に自信を蓄え、力を付けていった。まずは敵に自由を与えない守備の強度を高め、迅速なゴール前への侵入も威力が増した。それによって昇格を成し遂げ、天皇杯では決勝まで勝ち上がっている。その決勝では明らかに格上のG大阪を相手にしながら一歩も退かず、相手の心を拉ぐようなプレーを貫き、あと一歩のところまで追い詰めた。
 
「日本人選手は勝負を諦めず、向こう見ずなほどの攻撃マインドを持っている」
 
 2013年コンフェデ杯での日本代表はそう評されたが、追い込まれた時、決してうろたえず、むしろ傲慢なまでの勝ち気を見せるのも、日本人が美徳とすべき特長だろう。
 
<指揮官が選手たちの士気を高められれば、日本人は特有のメンタルの強さを見せる>
 筆者はそう考える。謙虚さは開き直りとなり、慎重さは状況次第で勇猛さに成り代わるのだ。
 
 ポポヴィッチの解釈は半分正しいが、半分は間違っている。彼は長く日本で采配を振るうことで、日本人の特性を知った。そのなかで、ひとつの結果を出した時期もある。しかし本質的な部分で、日本人の長所を引き出せなかった。
 
 自分たちの戦い方を信じる。
 
 そのスイッチが入った時の日本人は逞しい。岡田武史監督が率いた南アフリカ・ワールドカップの日本代表の快挙など、それは歴史が証明している。日頃から軽挙妄動を慎み、覇気をため込んでいるだけに、決心した時の勢いは天を衝くのだ。
 
「捨て身」
 
 そこまで集団心理が辿り着いたら、日本は世界と伍する。
 
文:小宮良之(スポーツライター)
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。01年にバルセロナへ渡りライターに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写。近著に『おれは最後に笑う』(東邦出版)。
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