レジェンドの軌跡 THE LEGEND STORY――第58回・エウゼビオ(元ポルトガル代表)

カテゴリ:ワールド

サッカーダイジェストWeb編集部

2020年03月05日

世界最高の大舞台でも主役として得点王に輝く

植民地出身のため、ベンフィカから差別的な待遇を受け、好条件を用意した他クラブへの移籍も許されないという時期もあった。ポルトガルに対し、悪感情を抱いたこともあった。しかし今やエウゼビオは、ポルトガル・サッカーの永遠のシンボルである。 (C) Getty Images

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 爆発的なスピード、圧倒的なパワー、平均的な身長(175センチ)をカバーする跳躍力といった身体能力に、優れたテクニックと得点嗅覚が加わったことで、エウゼビオはひとりで敵の守備陣を切り裂き、どこからでも、どんな距離からも相手ゴールを陥れることができた。
 
 相手選手はもちろん、ゴール裏の観客でさえも恐怖を覚えたという弾丸シュートは、「全体重をかけるために、ボールに身体を被せる感覚で毎日練習を繰り返した」(エウゼビオ)ことの賜物であり、必殺の武器を持ってピッチに君臨する彼を、人々は「黒豹」と呼んだ。
 
 欧州上陸からすぐにサッカー界を席巻した早熟の天才は、驚くことに61年に早くもポルトガル代表デビューを飾る。10月8日、記念すべきルクセンブルク戦で彼はいきなり初ゴールを決めた。当時のポルトガルの力は平凡で、このルクセンブルク戦も2-4で落としたほどだったが、エウゼビオの登場により大躍進を果たすこととなる。
 
 それまでメジャーイベントへの出場がなかったポルトガルが、大舞台へのチケットを手にしたのが1966年イングランドW杯。エウゼビオは欧州予選6試合で7ゴール(得点ランキングトップ)を挙げており、大会前から大きな注目を集める存在だった。
 
「勢いだけで勝つことができた」とエウゼビオが振り返るグループリーグでは、古豪ハンガリーを3-1で下し、ブルガリア戦は彼の初ゴールが飛び出して3-0、そして大会2連覇中ながら1勝1敗で後がないブラジルには3-1。手負いの王者に引導を渡したのは、2ゴールのエウゼビオだった。
 
 すでに3ゴールの「黒豹」がその存在を歴史に刻んだのは、準々決勝の北朝鮮戦だ。イタリアを下して勝ち上がってきた思わぬ相手に、ポルトガルは開始23秒で失点を喫すると、25分までにリードを3点に広げられる。
 
 エウゼビオは、驚くほどよく走る相手のマーカーに苦しめられたが、前半のうちに自ら2点を奪って、浮足立っていたチームに落ち着きをもたらす。後半になると、持ち前のスピードで北朝鮮を翻弄し続け、さらに2度ゴールネットを揺らして、5-3の大逆転勝利を演出してみせた。
 
「人生最高の試合」(エウゼビオ)を経て、初出場での初優勝を照準に捉えたポルトガルが準決勝で対戦したのが、開催国イングランド。「勝たなければならないのはイングランドで、自分たちには何のプレッシャーもなかった」というエウゼビオだが、開催国はしっかり彼への対応策を施してきた。
 
 ウェンブリーでの一戦、ポルトガルはボビー・チャールトンの先制ゴールを許し、終盤にも追加点を奪われる。エウゼビオはゴールを狙うも、ファウルも厭わないノビー・スタイルズの密着マークに遭い、PKで1点を奪うのが精一杯。敗戦後、悲嘆の涙に暮れる彼の姿に、イングランド人の観衆ですら心を震わせたという。
 
 ソ連との3位決定戦(1-0で勝利)ではPKから名手レフ・ヤシンの守るゴールを易々と破り、通算9点目をマークして大会得点王に輝いたエウゼビオは、大会を彩った主役のひとりとして、当然ながらベストイレブンにも選出された。
 
 しかし残念ながら、彼の代表チームでの栄光は、この一度限りに終わる。以降、73年にユニホームを脱ぐまで、ビッグイベント出場は成らなかったのである。代表での最終個人成績は64試合出場・41得点。得点率0.64は、今なお歴代1位の記録だ。
 
 一方、クラブにおいては、ベンフィカでタイトルの山を積み重ね、最終的に国内リーグ11回優勝という偉大な記録の樹立に貢献。個人では、7度のリーグ得点王に輝いた他、67-68シーズンには欧州で最多得点を挙げた選手に贈られるゴールデンシューズの初代受賞者となり、72-73シーズンにもこれを手にする栄誉に浴した。
 
 ただ、チャンピオンズ・カップでは67-68シーズンに決勝進出を果たすも、マンチェスター・ユナイテッドとの伝説の一戦で延長戦の末に敗北、またしても涙を飲むことに……。ちなみに、会場はウェンブリーであり、エウゼビオにとって「サッカーの聖地」は忌まわしき“鬼門”であり続けた。
 
 この頃になると、膝の負傷に悩まされ、68年には手術を行なうも完治せず。チーム一の高給取りでありながら、手広く展開していた事業で負債を抱えるなど、ピッチの内外で苦悩する彼の顔には、深いしわが刻まれることとなった。
 
 メディアやファンとの関係も悪化し、非難されることも少なくなかったエウゼビオは75年、ベンフィカとの交渉が決裂したことを受けて、アメリカ大陸に向かう。
 
米国、カナダ、メキシコのクラブを渡り歩き、76年にはトロント・メトロス=クロアチアで北米リーグ優勝を成し遂げた。また、76、77年はポルトガルに戻り、ベイラ・マール、ウニオン・デ・トマールでもプレーしている。
 
 80年に現役を退いた後は、ベンフィカに戻り、偉大なレジェンドとして再びクラブの顔となって、92年にはホームスタジアム「ダ・ルス」にその功績を称える像が設けられた。また、ポルトガル代表やサッカー連盟の仕事にも従事し、2004年のEURO招致の際には大きな役割を果たした。
 
 こうしたサッカーに関する能力だけでなく、その人間性も高く評価されていたエウゼビオ。真のスポーツマンであり、ジェントルマンだったからこそ、2014年1月5日に心不全でこの世を去った時、世界中の人々がその死を心から悲しむとともに、その偉大な人生に最大の敬意を表したのである。
 
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<アプリインストール>
公式サイト : https://pksc.jp/
Google Playストア (Android) : https://app.adjust.com/hipjap
App Store (iOS) : https://app.adjust.com/yl0j1j
 
<アプリ情報>
メーカー|NewsTech Inc.
配信日|配信中(2013年2月14日より)
ジャンル|サッカー・シミュレーション
価格| 基本プレイ無料(アイテム課金制)
 
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