【欧州サッカー時事解説】「ファイナンシャル・フェアプレー」とは?

カテゴリ:特集

片野道郎

2015年01月07日

パリSGとマンCが厳しいペナルティーを受けた。

80億円を超える罰金など、マンチェスター・シティとともに厳しいペナルティーを受けたパリSG。採算を度外視した大型補強に鉄槌が下された格好だ。 (C) Getty Images

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【第1回審査(13-14)の結果】
 昨年5月に結果が発表された第1回審査において、UEFAとの「和解協定」という形でペナルティーを受けたのは、パリ・サンジェルマン(フランス)、マンチェスター・シティ(イングランド)、ゼニト・サンクトペテルブルク、ルビン・カザン、アンジ・マハチカラ(ともにロシア)、ガラタサライ、ブルサスポル、トラブゾンスポル(いずれもトルコ)、レフスキ・ソフィア(ブルガリア)の計9クラブ。
 
 そのなかでも、パリSGとマンチェスター・Cは、罰金6000万ユーロ(約84億円)、CLへの選手登録制限(通常より4人少ないAリスト21人まで)、14-15シーズンの選手獲得予算6000万ユーロ(夏・冬の移籍期間合計)という厳しいペナルティーを受けた。
 
 この両クラブが、ここ数年で莫大な資金を移籍市場に投じてチームを強化してきたことは周知の事実。FFPという制約の下で、この巨額の「支出」を正当化するためには、それに見合っただけの「収入」が必要となる。
 
 しかし、パリSG、マンチェスター・Cともに、通常の営業収入だけでそれをカバーできるほどの経営規模は持っていない。そこで一種の「抜け道」として使われたのが、オーナーと関連を持つ企業による多額のスポンサー料だった。
 
 パリSGは、カタールの国営企業であるカタール観光局(QTA)と、マンチェスター・Cはオーナーのアブダビ王族が経営するエティハド航空と、それぞれ年間1億ユーロ(約140億円)を上回る巨額のスポンサー契約を交わし、それによって売上高を水増ししている。
 
 しかしUEFAは、これらの契約額は広告としての市場価値を大幅に上回っており「実質的にはオーナーによる赤字補填にあたる」と判断。FFP審査においては市場価値に見合った金額のみを「収入」として認めるという処置を取った。その結果、どちらも大幅な「支出超過」という判断を受けて、ペナルティーを課される結果となったわけだ。
 
 両クラブがUEFAと交わした「和解協定」には、向こう2年間でUEFAの基準に基づく「ブレイクイーブン」を達成するという項目も盛り込まれている。今夏から移籍市場での動きがスローダウンした唯一最大の理由もそこにある。
 
【第2回審査(14-15)の現状】
 現在進行中の第2回審査は、昨シーズン(13-14)を含めた過去3年間の経営収支に対する第1次チェックが終わり、以下の7クラブが支出超過の疑いがあるとして、経営情報の開示と説明を求められた。
 
 リバプール(イングランド)、インテル、ローマ(ともにイタリア)、モナコ(フランス)、スポルティング・リスボン(ポルトガル)、ベジクタシュ(トルコ)、クラスノダール(ロシア)。
 
 各クラブは現在、UEFAとの協議を進めており、今年4月までに具体的な経営健全化計画と15-16シーズンに適用されるペナルティーを含む「和解協定」について合意することになる。その内容は5月に発表される予定だ。
 
文:片野道郎
 
(ワールドサッカーダイジェスト2014.12.18号より加筆・修正)
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