アジアカップ2015

「マレティーネス」の世界のタフな現実 アギーレの八百長疑惑をサッカー文化的側面から考える

カテゴリ:日本代表

下村正幸

2014年12月27日

生き馬の目を抜くような世界で、酸いも甘いも噛み分けた。

2002年のオサスナを皮切りに計4チーム、10年に渡ってスペインで監督を務めたアギーレは、文字通り酸いも甘いも噛み分けた海千山千だ。写真はA・マドリー監督時代で06-07シーズン当時。 (C) Getty Images

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 それにしても、どうしてスペイン人はマレティーネスというプロ精神に反する行為に対して、寛容とも言える態度を示すのだろうか。それは、サッカーという競技が綺麗ごとだけでは済まされないということを理解しているからだろう。
 
 政府をはじめとする公的機関による特定のクラブに対する違法優遇疑惑、クラブの給与遅配問題、一向に改善される兆しが見えないテレビ放映権料の不公平な分配、先日死傷者を出したことでクローズアップされている過激派サポーターの問題など、現在リーガには解決すべき課題がそれこそ山積みだ。
 
 しかし、連盟やクラブの幹部など責任ある立場の人間には、そうしたネガティブな問題には見て見ぬふりを決め込み、サッカーからこぼれ落ちてくるうまい汁だけを吸おうという輩が少なくない。しかもその多くは、既得権益に固執してポストに居座りつづける。26年という長期に渡って会長に君臨し、スペイン・サッカー連盟を支配するアンヘル・マリア・ビジャールなどはその代表例だ。
 
 反対に、今年1月、ネイマールの移籍問題を発端に、明確な理由を明らかにしないまま電撃辞任したバルセロナのサンドロ・ロセイ前会長などは、その潔さがむしろ批判の対象になったほどだ。
 
 アギーレはそんなスペイン・サッカー界で生き抜いてきた人間だ。リーガでの監督歴は10年に及ぶ。生き馬の目を抜くような世界で、酸いも甘いもすべて噛み分けてきたのが、アギーレという指揮官だ。
 
 しかも監督として率いたのは、オサスナ、アトレティコ・マドリー、サラゴサ、エスパニョールといった、いずれも特有のカルチャーを持った一筋縄ではいかないクラブばかり。サラゴサでは、黒い噂が絶えなかったアガピト・イグレシアス前会長の下で仕事をした。このイグレシアス前会長が八百長の首謀者として疑われている。
 
 アギーレの“身体検査”が不十分だったと、日本サッカー協会を批判する向きがある。とはいえ、マレティーネスがいわば蔓延しているスペインで、そうした疑惑とまったく無関係なサッカー関係者を探すほうが難しいというのが現実だ。
 
 もちろん、スペインのサッカー界に長く身を置いてきたというその事実が、仮に八百長に関与していたとして、その免罪符になるわけではない。
 
 ブラジル・ワールドカップの惨敗を受け、日本サッカー協会が求めたのは、代表レベルでもクラブレベルでも豊富な実績と経験を持つ監督だった。その意味では、油断も隙もならないスペイン・サッカー界を生き抜いてきた海千山千のアギーレは、理想的な適材だったと言えるだろう。清濁は別にして、だ。
 
文:下村正幸

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