【浦和シーズン総括】終盤戦に何が起きたのか?「魔のラスト3試合」を徹底分析する

カテゴリ:Jリーグ

塚越 始(サッカーダイジェスト)

2014年12月18日

決して失敗ではなかったG大阪戦と鳥栖戦での指揮官の采配

終盤戦のスイッチ役を担った関根。最終戦でもキレのあるドリブルで決定機を演出したが……。(C) SOCCER DIGEST

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 32節のG大阪戦、続く鳥栖戦での2人の起用は、点が取れなかったので成功とは言えないが、決して失敗ではなかった。
 
 0-0の拮抗状態が続いたG大阪戦で、ペトロヴィッチ監督は56分に梅崎からM・リシャルデスへ、64分に平川忠亮から関根へ、早い段階で交代カードを切る。ゴールを奪え、というメッセージだ。
 
 すると指揮官の狙い通り、試合は動いた。
 67分、速攻で抜け出した関根からのパスを受けた青木拓矢がゴール正面から決定的なシュートを放つ。だが、これはクロスバーを越えた。82分、柏木のパスを受けた宇賀神友弥が左サイドからカットインしGKと1対1に。しかしシュートは東口順昭のビッグセーブに阻まれた。
 
 この試合の決定機はこの2回だけ。つまり、2人を投入するまで、決定機を作れずにいたのだ。だから静かに進めていた試合にスイッチを入れて、動かす。そのペトロヴィッチ監督の狙いは“当たった”と言えた。
 
 とはいえ、関根とM・リシャルデスを投入すると、かなりの「前傾姿勢」になる。それまで保たれていたチームのバランスは崩れ、守備が脆くなるというリスクも生じる。
 
 案の定、「残り10分、必ずチャンスはくる」(長谷川健太監督)と踏んでいたG大阪にペースを奪われ、2失点を食らった。
 
 88分、柏木が敵陣で放ったFKのボールを奪われ、G大阪にカウンターを許す。この時、ボールを持ち運んだリンスに応対したのは、特段守備力に秀でているわけではない、M・リシャルデスと関根だった。2人は決して怠慢なプレーはしていない。しっかり走り、ゴールに対する最短コースを抑え、突破は許さないという最低限の守備はした。
 
 しかし、守備力は高いとは言えなかった。前掛かりになるバランスを修正しきれないまま、倉田にはトドメの一発を叩き込まれた。
 
もしも、不整脈による欠場を余儀なくされた鈴木がいれば、リンスのパスをインターセプトするか、イエローカード覚悟でカウンターの流れをどこかで食い止めていたかもしれなかった……。
 
 33節の鳥栖戦も、34分までに2度の決定機を作っていたが、この後、またもピタッと流れが滞ってしまった。膠着状態。流れを変えたのは、やはり65分に同時投入されたM・リシャルデスと関根だった(梅崎と平川がアウト)。
 
 右ウイングバック(WB)に宇賀神、左WBに関根が入る「鳥栖対策布陣」を敷くと、投入から2分後、宇賀神の縦パスに抜け出した李が菊地直哉に倒されPKを獲得。阿部勇樹がこれを沈め、先制点を奪った。
 
ただ「前掛かり」な状態は変わらず、ポイントはこのあとだった。数的優位に立ち、押せ押せムードの浦和は、70分に青木、75分に李、84分に立て続けに森脇良太や柏木……、一気に4度の決定機が訪れていたのだ。
 
 リードした後、高さと1対1の強さを備えた永田を投入し、前傾になったバランスを修正して、締めにかかった。だがDF1枚を入れただけでは「前傾」は変わらない。浦和が数的優位に立っているというのに、ボールはまるで落ち着かない。ノーガードで打ち合うようなヒヤヒヤの展開が続き、GK林彰洋のロングフィードを森脇が安全にゴールライン裏へセーフティーにクリアし、そのCKから小林にヘッドで決められたのだ。
 
 ロスタイムの悲劇だった。ただし決して偶然とは言えない失点と言えた。あの攻撃的布陣のまま、2点目のトドメを刺すしか、勝利する道はなかったのかもしれなかった。
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