一方、レッズは優勝のプレッシャーが重くのしかかってきたのか、残り10試合を切った辺りから失速し、前節、勝てば優勝という状況で、ガンバに敗戦。そして、サガン戦。アディショナルタイムにセットプレーから失点するというのは、優勝を狙うチームが犯すミスじゃない。
 
　レッズにとって痛恨なのは、興梠が負傷したことだろう。自ら点を取るだけでなく、２列目、３列目の攻撃力を引き出せる興梠は、ペトロヴィッチ監督にとって理想的な１トップだったんじゃないかな。しかも彼はアントラーズ時代にリーグ三連覇を経験し、勝者のメンタリティを備えている。優勝するためには、どう振る舞わなければならないかをよく知る彼がこの時期に不在なのは、大きな誤算に違いない。
 
　レッズはこれまで大型補強を敢行してきた割に、選手層がそれほど厚くない。スタメンは固定されていて、交代カードも豊富じゃない。マルシオ・リシャルデスには全盛期のアルビレックス時代の輝きが見られないし、売り出し中の関根にしても、31節のマリノス戦ではゴールしたものの、まだまだ計算できない。ペトロヴィッチ・チルドレンとして寵愛を受けてきた柏木と槙野がいかにチームを引っ張れるか、これが大きなポイントだろうね。
 
　ガンバが本当に優勝したら、07年のアントラーズに並ぶ大逆転劇ということになる。ただし、忘れてはならないのは、ガンバが今季J２から復帰してきたばかりだということ。前半戦では大きく出遅れ、ワールドカップの中断期間を迎えた時点での成績は４勝３分７敗の16位。１年でJ２に逆戻りするのではないか、と思われていた。そんなチームに三冠を達成されてしまっては、他のチームがちょっと情けなさすぎる。少なくともレッズには、最後に意地を見せてほしいものだ。
 
　天皇杯についても触れておきたい。12月13日に行なわれる決勝は、J１のガンバとJ２のモンテディオとの顔合わせになったけど、準決勝のガンバ対エスパルス戦が東京で、ジェフ対モンテディオ戦が大阪で行なわれたのは、いかがなものだろう。
 
　ヤンマースタジアム長居での一戦は、J２対決、関東と東北のチームの対戦、平日のナイターということで、2221人のお客さんしか入らなかった。伝統ある天皇杯の準決勝で、この数字はあまりに寂しすぎる。でも、試合会場を入れ替えれば、もっと多く集客できたんじゃないかな。なぜ、そうした柔軟な運営ができないのだろう。
 
　今年は、国立競技場が改修工事に入り、年明けにアジアカップも控えているため、決勝が元旦から12月13日に移された。そのため、準決勝まではリーグ戦と並行して行なわれ、主力を休ませたJ１チームが下のカテゴリーのチームに敗れる事態が数多く見られた。
 
　国内の大会では最も伝統と権威があるはずなのに、自らの手でその価値を下げているように僕には見えるよ。