４－４－２の片渕前監督時代を含め、主に左サイドハーフでプレーしていた高木は、トップ下に入った岐阜戦で躍動した。数多くボールに触り、切り替えの早さも素晴らしく、結果、３－１で勝利したゲームで２得点に絡んだ。
 
　技術と、アイディアと、駆け引きに富んだプレーぶりは、ゲームメーカーという言葉がふさわしい。正しくはプレーメーカーとすべきであろうが、サッカーの面白さが詰まった存在感、雰囲気から、どうしてもゲームメーカーと呼びたくなる。
 
　特筆すべきはボールを受ける位置だ。今季初めて連勝した岐阜戦、続く栃木SC戦（18節２－０）は、ボール保持者への相手のプレッシャーが強くなく、2.5列目のエリアで前を向いてプレーした。逆に、強烈にプレッシャーを掛けてくる19節ツエーゲン金沢戦では、トップスピードで持ち上がれる技量を生かして1.5列目でボールを集配し、高く保ちたい金沢最終ラインの背後を脅かした。試合は１－２で競り負けたが、高木自身は攻撃を組み立てるだけでなく、ゴール前に走り込んでレオナルドのクロスをスライディングで合わせるファインゴールを決めている。

　20節の鹿児島戦は、後半、2ゴールを奪って今季初の逆転勝利を収めた。「前からプレッシャーに行くより、守備で相手を引き込んだ方が、スペースが生まれる。監督もそう言っていたし、僕も感じていました。後半やり方を変えて、カウンターがはまった。戦術で勝った試合です」。
 
　攻撃も守備もピッチを俯瞰しながらプレーして、チームを勝利に導く。そのゲームメーカーっぷりを、本人はどう思うのか。「今どき、なかなかいないですよね……」。そう言って、高木はニヤリと笑った。現代サッカーでは絶滅危惧種――いや、すでに絶滅してしまったとすら思える役割で異彩を放つ攻撃的MFは、シーズンを折り返すここから、果たしてチームを昇格争いへと引き上げられるか。
 
取材・文●大中祐二（フリーライター）