出場からわずか1分で決勝弾!不屈の男・上原慎也が故郷の琉球で決めた1点の価値

カテゴリ:Jリーグ

仲本兼進

2019年06月02日

プレー時間は限定されるも、上原の存在感は日に日に増している。

 プロ生活11年目を迎える上原は、札幌でデビューを果たす。当時から50メートル5秒7の脚力と、186センチの高身長、両足から繰り出される強烈なシュートを武器としレギュラーに定着。2009年のデビューシーズンは25試合出場3ゴールをマークし、札幌に無くてはならない存在となっていった。FWのみならずSBとしてもプレーできる柔軟性をあわせ持ち、チームの勝利を最優先に戦ってきた上原は札幌在籍の間、2度のJ1昇格にも貢献している。
 
 しかし、同時に上原は怪我との戦いも強いられていた。沖縄大時代に右膝前十字靭帯を断裂という大怪我に見舞われ、プロ入り後も怪我が重なる。そのたびに不死鳥の如く復活しサポーターを喜ばせてきたものの、右第5中足骨基部骨折、左脛骨疲労骨折という重症を負い、シーズンを棒に振るシーズンも幾度とあった。9年間在籍した札幌に別れを告げ、愛媛へと移った昨シーズン途中、今度は右膝を負傷する。
 
 傷が癒えぬまま愛媛を離れ新天地を探すなか、かつて札幌時代にともに戦ってきた上里一将と電話で話を交わす。「沖縄でプレーしよう」。
 
 上原は故郷に戻り、温暖な地でリハビリに励みながら再びピッチに戻ることを追求した。琉球加入後、上原は全体練習を行なうその横でひとりリハビリに時間を費やす。その姿を見て、選手たちは上原に声をかけ励まし、チームスタッフも万全な態勢でピッチに戻ってもらえるよう懸命にサポートしてきた。精密検査を行ない、状態が良くなっていても上原には怪我への恐怖心との戦いが待っている。家族の支えも受けながら徐々に一歩ずつ、ボールを蹴る回数を増やしていき、5月に入ってミニゲームにも参加できるまで回復した。ゲームによる疲労のリバウンドを考慮してプレー時間は限定されるも、上原の存在感は日に日に増している。
 

「テーピングを巻けば普通にプレーできる」と上原。万全なサポートを受け怪我への恐怖心にも打ち勝つようになった彼の姿を見て、樋口靖洋監督も太鼓判を押す。
 
「まだ20分ぐらいが限界かなと思うが特徴のある選手ですし、ユーティリティー性、経験値の高さも含め、途中からの出場でも十分に力を発揮してくれる。実際にスピードや高さの部分でJ2の舞台で対応できる姿を見せてくれた。チームに新戦力が加わったようで頼もしい存在です」(樋口監督)
 
「チームが苦んでいる時も助けられる選手になりたいと思っていますし、シーズンまだまだ試合があるのでひとりの選手としてみんなの力になれればなと思います」
 
 上原は合流が出遅れた分、チームのためにという思いが強い。沖縄のピッチで輝き放つ「背番号21」はFC琉球、そして沖縄のサッカーの未来を照らす。
 
取材・文●仲本兼進(フリーライター)
 
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