韓国の仁川で開催されていたアジア大会が閉幕した。４年前の広州大会では男女ともに金メダルに輝いていただけに連覇を期待したけど、なでしこジャパンは決勝で北朝鮮に敗れて準優勝に終わった。一方、U-21代表で臨んだ男子は、メダルはおろか、ベスト８で敗退し、１年半後のオリンピック最終予選に不安を残す結果になったね。
 
　男子の準々決勝の相手は、地元の韓国。多くのサポーターの後押しを受けた彼らに、日本はずっと押されっ放しの展開だった。長身センターバックがなんとか弾き返して凌いでいたけど、全体的に押し返すだけの力はなかった。
 
　それまで５ゴールを決めていた鈴木はシュートすら打てず、キープもままならない。中島も野津田も脅威になれず、チャンスを作れなかった。特に後半は防戦一方で、韓国のシュート精度がもう少し高ければ、大差で負けていてもおかしくなかった。
 
　PKを取られた場面は議論の分かれるところかもしれないが、あのレフェリーの笛の傾向を考えれば、PKを取られることは予想できた。慎重に対応すべきで、経験不足と言われても反論できないよ。
 
　韓国のほうが２歳年上で、しかもオーバーエイジを使っていたんだから、負けても仕方がないという声もあるかもしれない。でも、育成年代ならまだしもプロの世界に年の差なんて関係ない。それはブラジルのネイマールやドイツのゲッツェを見ればよく分かる。
 
　ブラジル・ワールドカップで活躍した２人は92年生まれの22歳。U-21代表とは１歳しか違わない。それでも彼らは世界の大舞台で、年齢なんて関係なく活躍している。
 
　それに、そもそも大会規定では23歳以下の選手と３人のオーバーエイジの編成で参加できることになっている。韓国は規定どおり、23歳と22歳の選手を揃え、３人のオーバーエイジも招集して本気で優勝を狙ってきた。それに対して日本は、大会規定を承知のうえで21歳以下のメンバー構成で臨んだのだから、年齢は言い訳にすべきじゃない。
 
　なぜ、日本が21歳以下の選手で臨んだのかと言えば、２年後のオリンピック本番で23歳以下となる五輪代表チームの強化のためだ。でも、それで準々決勝で敗れるぐらいなら、22、23歳の選手やオーバーエイジを混ぜて優勝したほうが、はるかに大きな経験になる。
 
　例えば今、22歳の選手と言えば、宇佐美や柴崎、武藤がそうだ。彼らを招集すれば、同じポジションの鈴木や中島、大島らが出番を失ったかもしれないけど、刺激は受けられたはずだ。それにオリンピックではオーバーエイジを起用する可能性もあるわけだから、今から厳しいポジション争いを経験するのも悪くない。
 
　しかも今回はJリーグを考慮して、１クラブから原則１選手という制限があった。そんな中途半端な選考をしていては、なんの強化にもならない。本気で優勝を狙い、接戦をモノにして初めて強化になるんだ。
 
　結局今回のアジア大会でも明確なノルマが設定されなかった。ベスト８で敗退しても、誰かが責任を取るわけではない。こうして責任の所在を曖昧にして、「ドンマイ、ドンマイ」なんてやっているうちに過去のU-19代表のように世界大会に出られなくなってしまうよ。一度出場を逃すと歯止めが効かなくなるものなんだ。そのうちオリンピックに出られなくなり、ワールドカップにも出られなくなる日がやって来てしまうよ。
 
　一方、なでしこジャパンは世代交代がまるで進んでいない。澤が外れ、欧州組が呼ばれなかったのに、代わりに招集された新顔から、このチャンスをモノにしてろうという気迫が感じられなかった。
 
　ワールドカップを制したのは３年前。今、抜擢されている選手たちは、なでしこジャパンの雄姿に感動したり、勇気付けられたりしたはずだ。その一員として来年のワールドカップに出場するチャンスが目の前に転がっているのに、自分がなでしこジャパンの未来を担うんだという気概や覚悟が伝わってこない。せっかく女子サッカーが注目されるようになったのに、また以前のような状態に戻りたいのかな。佐々木監督はこの３年間、いろんな選手にチャンスを与えてきた。それでも世代交代が進まないのは、選手の側に問題があるような気がするよ。