そして、悲願のJリーグ入りについて、岩本GMは何年先を想定しているのだろうか。
「高橋先生も10年でJ1へということを言っていて。上に6カテゴリーあるので簡単じゃないのは分かっていますが、実際に上がるかどうかは運も左右するので、それくらいの気持ちじゃないと。J3までの4段階を6年という感じでいかないと10年でJ1は難しいですよね。上に行けば、今度はより資金力のあるクラブばかりになりますから」
東京都1部では他を凌駕する資金力を誇る南葛SCだが、関東リーグ1部でJリーグを目指すクラブと比較すると、予算規模ではまだまだ見劣りするという。現在のところは、高橋代表からの資金提供に頼る部分も大きいが、今後はさらなるスポンサー収入も重要になってくる。そうした点では、「去年は(GMに就任して)時間がなかったので、あまりスポンサーセールスもできなかったのですが、今年はそこの収入も増えています」と、見通しは明るいようだ。
そうなると、今後も大胆な補強策を進めながらチームを強化していくことになるのかといえば、決してそうではないという。
「今の選手たちに関しては、ふたつ上のカテゴリーでも戦えるという認識で捉えています。今シーズンは確かにかなり選手を入れましたけど、来シーズンに関しては監督・コーチと話し合いながら、補強ポイントを絞って、ということになると思います」
チーム強化については、今後しばらくは継続性を重視し、福西崇史監督のもとで“つないで崩す”スタイルを浸透させていく方向だ。また、「選手たちにも、少なくともJ3に上がるところまでは一緒にやっていこうよと話しています」と言う通り、現有戦力への期待値は高いのだ。
そして今季はまず、Jリーグ入りへの最初の関門となる関東リーグ昇格を目指すことになるが、岩本GMは将来的に「実現できたら嬉しい」という夢があると語ってくれた。
「先日、高橋先生が生まれ育った最寄りの四ツ木駅の『キャプテン翼』特別装飾記念イベントに、イニエスタが来てくれたんですが、彼は大ファンなんですよね。今年35歳になりますけど、もし5年後くらいまでにチームがJ3に上がれたら、ダメ元でオファーしてみたいですね。最後の1シーズンだけ、南葛のユニホームを着てプレーしてくれないかと言ったら、可能性もなくはないかなと(笑)」
初参戦となるJ3の舞台、新スタジアムのこけら落としで、イニエスタが躍動する――。果たして、そうした夢を実現できるほどに、南葛SCは順調な足取りで、Jへのステップを駆け上がれるだろうか。この先のチームの奮闘に注目したい。
(このシリーズ了)
取材・文●長沼敏行(サッカーダイジェストWeb)
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