リードされているにもかかわらず、清水が二枚の交代にとどまったワケ
対して、悪い試合はしていないにもかかわらず、とうとう最下位に転落してしまった清水のヤン・ヨンソン監督は気の毒だった。苦虫を噛み潰すというよりは哀愁の漂う表情で「内容はいいものを見せながら得られるものがなかった試合だけに、選手としては受け止めるのも辛い結果になっていると思います」と、若い遠征メンバーを労わなければならなかった。
負けてはいけない試合だったにもかかわらず、すべての交代カードを切ることはできなかった。ドウグラスと滝裕太の二枚だけ。ヨンソン監督は「ドウグラス選手を入れることによって空いているスペースを突いていきたかった。滝選手も入れましたが、ヘナト(アウグスト)選手のアグレッシブさを前線で見せてもらえればと思いました。ベンチにいたほかの選手はみな守備的でしたので……」と采配の意図を語ったが、最終的には攻撃のカードが残されていなかったことで、逆転への機運を高めるさらなる一手が打てなかったというわけだ。
長谷川監督もヨンソン監督も、ともに理に適った采配をしていたが、田川亨介を最後の一枚に送り出す余裕のあった東京に対して、清水は最後の局面で展望を開きにくい状況に陥ってしまった。僅差のなかに明暗がくっきりと分かれた、花見の季節の好勝負だった。
取材・文●後藤勝(フリーライター)