三好は縦への攻撃一辺倒だった横浜に広がりをもたらしている
武富孝介(湘南)は札幌戦で2ゴールを挙げ、勝利に貢献した。浦和ではなかなか芽が出ず、出場機会に恵まれなかった。5年ぶりの湘南復帰になったが、曺貴裁監督の「再生工場」で走って、動ける選手になってピッチに戻ってきた。シャドーに配置されたが、運動量が格段に増え、味方のボールになると何度も粘り強く、ゴール前に飛び込んでいった。札幌のゴールも豪快なゴールではなく、泥臭くもぎとった感のあるもので、それも湘南のスタイルにフィットしている。昨年は得点力不足に悩み、今季もスーパーなFWが不在の中、武富の存在は湘南にとって非常に大きいだろう。
三好康児(横浜)は、非常に活き活きとプレーしていた。昨年の札幌ではシャドーでプレーしていたが、横浜でのポジションはインサイドハーフ。攻守への貢献が求められるが、違和感なくプレーしていた。とりわけ攻撃での貢献度が高い。もともと非凡な攻撃センスの持ち主だが、昨シーズン、ミシャのサッカーでシュートの意識、前を向いて仕掛ける姿勢が磨かれた。それがG大阪戦でもいかんなく発揮された。34分、見事なミドルシュートは迷わず、アウトサイドに掛けて振り抜き、技術の高さとゴールを狙う貪欲な姿勢を見せた。攻撃のアイデアが豊富な三好が中盤に入ることで、コンビネーションで打開するシーンが増え、縦への攻撃一辺倒だった横浜に攻撃面での幅の広がりをもたらしている。これからチームに馴染んでいくと、さらに「恐さ」が増していくだろう。それを初戦でチームメイトにはもちろん、対戦チームに結果で示したことで自らの価値をさらに上げたと言える。
文●佐藤俊(スポーツライター)