立ち上げ当初からリズムのいいサッカーを見せていた「2軍」のチーム。
「攻撃についてはいくつかのヒントを与えて、選手に考えさせている。試合になったら、どれを使うかは選手の判断」
初戦を終えた時は期待と不安が半分ずつといった様子で、そう語っていた指揮官も、8強入りを決めた頃には、「一戦一戦、自分たちの力を発揮しながら成長してきている」と、確かな手応えを口にするようになっていた。
それは選手にも通じることだ。
「試合をするたびに、コンビネーションや距離感が合ってきた。それがいい形で得点につながっている」
東慶悟はそんな言葉で、試合ごとに深まる自信を表わした。
それにしても、2軍とまで言われた急造チームが、なぜこれほどまで質の高いサッカーができたのか。実は、大会前から予兆はあった。
アジア大会初戦の約2週間前。国内キャンプの締めくくりとして行なわれた湘南との練習試合で、U-21代表は4-2と快勝。北京五輪代表監督の経歴を持ち、当時の湘南を率いていた反町康治監督は「立ち上げから日にちが経っていないわりにはリズムのいいサッカーをしていた」と語り、こう続けていた。
「前線の引き出し方、ボールの動かし方など、理想的な得点の仕方だった」
U-21代表はこの練習試合でも、シンプルにボールを動かしながら、フリーランニングによって選手同士がスペースを作り、それを生かす動きができていた。その精度をさらに高めたのがアジア大会だったというわけだ。
秀逸だったのは、選手の組み合わせの妙である。長い距離を走ってスペースへ飛び出せる水沼宏太。ドリブルが得意でラストパスも出せる山崎亮平。豊富な運動量で的確なサポートを続ける東。そして、驚異的なスピードを持つ永井。持ち味の異なる前線の選手たちが互いの特長を引き出し合い、見事なハーモニーを奏でた。
「ピッチのなかにいても、『気持ちいいな、これは』というゴールもあったし、誰かがスペースを空けたら、そこに誰かが入るといったことが、ホントうまくできている。自分でも『なんでだろう?』と思うほど。初めて集まったメンバーでもチームの雰囲気はいいし、一人ひとりがメダルを獲りたいと思っている。このサッカーで優勝して、(Jリーグで試合に出ていない)オレたちでもできるんだというのを見せたい。そういう気持ちは一人ひとり強いと思う」
水沼がそう話していたように、単に点が取れているというだけでなく、流れるような美しいゴールが多いのもこのチームの特長だった。
とはいえ、ここまでは対戦相手に恵まれた感は否めなかった。東が「勝ち上がるにつれ、相手のレベルも上がってくる。それに対して、個人としても、チームとしてもどれだけできるか」と課題を挙げていたが、まさにその通りだった。
実際、準々決勝のタイ戦以降、試合の様相は一変した。
「日本は人数をかけて守ってきた。日本は今大会の優勝候補だが、ゴールしたことを除けば、うちのほうがよかった」
試合後にタイのブライアン・ロブソン監督が口にしたこの言葉は、決して負け惜しみではない。日本はこれまでの試合のように、ボールポゼッションで優位に立てず、試合の大半はタイが攻め、日本が守備ブロックを作って対応する時間が続いた。
事実、関塚監督も試合を振り返り、次のように語っている。
「前半終了間際にうまく先制点を取れて、後半はそれをよくチーム全体で守り切った。そういう試合だったと思う」
この準々決勝以降、準決勝のイラン戦、決勝のUAE戦の3試合は、相手にボールポゼッションで上回られ、日本が粘り強く守るという展開が少なくなかった。
だが、それでも粘り強く戦い、最後は永井のスピードという武器を生かす明確な戦いは、ある意味で、のちのロンドン五輪本大会に通じるものがあった。
初戦を終えた時は期待と不安が半分ずつといった様子で、そう語っていた指揮官も、8強入りを決めた頃には、「一戦一戦、自分たちの力を発揮しながら成長してきている」と、確かな手応えを口にするようになっていた。
それは選手にも通じることだ。
「試合をするたびに、コンビネーションや距離感が合ってきた。それがいい形で得点につながっている」
東慶悟はそんな言葉で、試合ごとに深まる自信を表わした。
それにしても、2軍とまで言われた急造チームが、なぜこれほどまで質の高いサッカーができたのか。実は、大会前から予兆はあった。
アジア大会初戦の約2週間前。国内キャンプの締めくくりとして行なわれた湘南との練習試合で、U-21代表は4-2と快勝。北京五輪代表監督の経歴を持ち、当時の湘南を率いていた反町康治監督は「立ち上げから日にちが経っていないわりにはリズムのいいサッカーをしていた」と語り、こう続けていた。
「前線の引き出し方、ボールの動かし方など、理想的な得点の仕方だった」
U-21代表はこの練習試合でも、シンプルにボールを動かしながら、フリーランニングによって選手同士がスペースを作り、それを生かす動きができていた。その精度をさらに高めたのがアジア大会だったというわけだ。
秀逸だったのは、選手の組み合わせの妙である。長い距離を走ってスペースへ飛び出せる水沼宏太。ドリブルが得意でラストパスも出せる山崎亮平。豊富な運動量で的確なサポートを続ける東。そして、驚異的なスピードを持つ永井。持ち味の異なる前線の選手たちが互いの特長を引き出し合い、見事なハーモニーを奏でた。
「ピッチのなかにいても、『気持ちいいな、これは』というゴールもあったし、誰かがスペースを空けたら、そこに誰かが入るといったことが、ホントうまくできている。自分でも『なんでだろう?』と思うほど。初めて集まったメンバーでもチームの雰囲気はいいし、一人ひとりがメダルを獲りたいと思っている。このサッカーで優勝して、(Jリーグで試合に出ていない)オレたちでもできるんだというのを見せたい。そういう気持ちは一人ひとり強いと思う」
水沼がそう話していたように、単に点が取れているというだけでなく、流れるような美しいゴールが多いのもこのチームの特長だった。
とはいえ、ここまでは対戦相手に恵まれた感は否めなかった。東が「勝ち上がるにつれ、相手のレベルも上がってくる。それに対して、個人としても、チームとしてもどれだけできるか」と課題を挙げていたが、まさにその通りだった。
実際、準々決勝のタイ戦以降、試合の様相は一変した。
「日本は人数をかけて守ってきた。日本は今大会の優勝候補だが、ゴールしたことを除けば、うちのほうがよかった」
試合後にタイのブライアン・ロブソン監督が口にしたこの言葉は、決して負け惜しみではない。日本はこれまでの試合のように、ボールポゼッションで優位に立てず、試合の大半はタイが攻め、日本が守備ブロックを作って対応する時間が続いた。
事実、関塚監督も試合を振り返り、次のように語っている。
「前半終了間際にうまく先制点を取れて、後半はそれをよくチーム全体で守り切った。そういう試合だったと思う」
この準々決勝以降、準決勝のイラン戦、決勝のUAE戦の3試合は、相手にボールポゼッションで上回られ、日本が粘り強く守るという展開が少なくなかった。
だが、それでも粘り強く戦い、最後は永井のスピードという武器を生かす明確な戦いは、ある意味で、のちのロンドン五輪本大会に通じるものがあった。