【イラン戦検証】なぜ相手は転がるボールより主審へのアピールを優先したのか? 勝負を分けた選手個々の成熟の違い|アジア杯

カテゴリ:日本代表

加部 究

2019年01月29日

「チーム一丸」を当たり前のように表現できる国は意外と少ない

南野は持ち前の突破力を駆使して2ゴールを演出。先制点は、諦めずにボールを追い続けたプレーが報われた。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 一方日本は対照的に、1970年代以降からラテン系への憧憬を強め、プロ化以降は独自の特徴を活かす戦い方へとシフトした。そこに欧州へ進出した個々の経験値が肉付けされ、献身性、勇敢さ、集中力の持続などの国民的な特徴が加わり、独創的な成長を遂げている。

 また根底では、他国から見れば極端にエゴの少ない異質な常識を共有しているので、欧州でプレーしている選手たちも代表に戻ると、より心地良くストレスなく力を発揮しやすい。それぞれの狙い、動きが無駄なく連鎖していくことが重要な武器になっている。

 例えば、後半開始早々にエリア手前で酒井宏樹がハンドをしたシーンがあったが、チームメイトは気にするな、と優しく肩を叩いた。もしこれが欧州やイランなら、味方から大声で非難されていたかもしれない。イランの選手たちは、まず局面の是非にこだわり、自分の非を打ち消すことに躍起になる。だから日本が先制したシーンでも、転がるボールより南野拓実のシミュレーションをアピールすることを優先した。さらに試合の決着が見えると、今度は腹いせの挑発を繰り返した。

 サッカーの歴史を俯瞰すれば、いくつか類似の参考事例に遭遇する。昔からアルゼンチンの能力には疑いがなかったが、重要な試合で暴力的な行為に出て「アニマル」と嫌悪された。だが1978年地元開催のワールドカップで、当時のメノッティ監督が冷静に闘う姿勢を浸透させ、輝かしい歴史が始まった。イランに勝利した日本の選手たちは「チーム一丸となって」と口を揃えたが、それを当たり前のように表現できる国は意外と少ない。

 そして満身創痍の結成間もない日本代表は、熟成したはずのイランを冷静に下した。それは逆にプレーヤー個々の総合的な成熟の相違を示すもので、おそらく一朝一夕で覆るものではない。

文●加部 究(スポーツライター)
 

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