日本のボランチ陣は十分な層の厚さを確保しているとは言い切れない
188㎝とサイズにも恵まれた冨安は、人への対応にも優れ、前線へのフィード能力も悪くない。シント=トロイデンでプレーしていることもあり、縦パスを狙う意識も植え付けられている。もちろんトルクメニスタン戦は即席だったので、周囲と連係したカウンターへの対応を含め課題は見えた。だが冨安が本来のセンターバック(CB)だけではなく複数ポジションをこなせれば、試合展開に応じた動かし方にも幅が出てくる。例えば、中山雄太のズヴォレへの移籍が決まったが、こうして今後サイズのある有望株が頭角を表わしてくることを想定すれば、CBとともにボランチもサイズと身体能力を備えた選手たちによる底上げが見込める。もしこうした近未来の構想まで描けているとすれば、それは五輪代表と兼任のメリットとも言える。
続くオマーン戦では遠藤が復帰し、冨安は本来のCBでプレーをした。ただし現状でボランチの第一選択と言える柴崎と遠藤は、所属クラブでのレギュラー争いで苦戦を強いられており、コンディションの維持が不透明だ。現代のボランチには、攻守、さらには攻撃から守備、及び守備から攻撃への切り替えと、すべての局面での貢献が求められる。一方でまだ日本は十分な層の厚さを確保しているとは言い切れず、だからこそ新しい可能性の開拓が必要になる。
森保監督は、今、冨安がボランチの最適解でないのは承知の上で、敢えて挑戦した。そこには将来を見据えた深謀遠慮が詰め込まれており、「失敗」の一言で片づけるのはあまりに短絡だ。
文●加部 究(スポーツライター)
森保監督は、今、冨安がボランチの最適解でないのは承知の上で、敢えて挑戦した。そこには将来を見据えた深謀遠慮が詰め込まれており、「失敗」の一言で片づけるのはあまりに短絡だ。
文●加部 究(スポーツライター)