かつて“水を運ぶ”ボランチだった森保監督の冨安抜擢に見えた深謀遠慮|アジア杯

カテゴリ:Jリーグ

加部 究

2019年01月15日

ピンチをチャンスに転じようとした、冨安のボランチ抜擢

自身もボランチとしてアジアカップを制覇した経験のある森保監督(左)。初戦では本来CBの冨安をボランチに起用する采配を見せた。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 現役時代の森保一監督と一緒に戦った日本代表メンバーは、今でも「ポイチ」のニックネームを通している。ハンス・オフト監督に選ばれた際に、多くのチームメイトが姓名の区切りに戸惑い、それがそのまま呼称として定着したのはあまりに有名だ。

 オフトは日本代表監督の就任前に、マツダ(現サンフレッチェ広島)での指導経験があり、そこで森保の特徴を把握していた。逆にオフトが代表監督を任されなければ、未来の森保監督の指導者としての開花もなかった可能性が高い。イビツァ・オシム流に言えば、現役時代の森保は紛れもなく「水を運ぶ人」だった。身体を張ってボールを奪い取り、それを絶対的なゲームメイカーのラモス瑠偉に届ける。縁の下の力持ちに徹した。それは当時オフトだからこそ着眼した職人芸の資質だった。

 指導者に転身してからの森保監督の最大の強みは、おそらく元雑草ならではの貪欲で柔軟な吸収力だろう。すでに広島時代の実績で十分に名将なのに、過去の栄光に固執せず、常に新しい情報をインプットし続け変化を厭わない。それを見越してロシア・ワールドカップに帯同させたとすれば、JFA(日本サッカー協会)の功績と言えるかもしれない。
 
 森保監督は、短い期間ながら日本代表の真剣勝負を見届け、国内での旧い方程式とは決別し、新しい日本サッカーの可能性を整理して歩み出した。だが親善試合で望外の滑り出しを見せた新生日本代表には、肝心なアジアカップが近づくと次々に難題が降りかかった。なかでも想像を超えて苦境に追い込まれたのが、皮肉なことに自らプレーしてきたボランチの人選だった。鹿島でアジア制覇に貢献した三竿健斗が故障し、大会開幕前には守田英正が離脱。遠藤航が発熱し、青山敏弘もコンディションを崩した。しかしそれでも指揮官は、守田の代わりに新しいボランチではなく、DFの塩谷司を招集。結局トルクメニスタンとの初戦には、本来DFの冨安健洋をボランチとして送り出した。
 
 開幕時点で元気なボランチは柴崎岳ひとり。ただし柴崎の特徴は、言うまでもなく攻撃の起点となる中距離パスで、ボールを奪い切る守備能力は発展途上だ。オシム当時の日本代表に当てはめれば、森保監督自身が務めたように「水を運ぶ」パートナーが不可欠になる。しかし反面森保監督は、水を運ぶだけに終始するボランチが現代サッカーでは通用しないことも知悉している。そこでピンチをチャンスに転じようとしたのが、冨安の抜擢だったと思う。
 
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