後半、伊藤は守備面で気迫十分のプレーを随所に披露。ハーフタイムに降り出した雨が、さらに激しくなり、消耗戦の様相を呈するなか、53分にインドネシアはカウンターを仕掛け、MFムハマド・ルトフィがミドルシュートを放つが、これは伊藤が自らの身体を滑らせて気迫のブロック。61分には右サイドをMFサディル・ラムダニに突破されると、そのままえぐられてマイナスの折り返し。ピンチの場面だったが、この折り返しを伊藤が全速力で戻ってエンドラインに蹴り出し、CKに逃げた。
 
　何度も守備面でのスプリントを繰り返し、時には身体を投げ出す。これまでの伊藤のプレーにはあまり見られなかった激しさや泥臭さがチームを大きく盛り立てた。
 
「（コンビを組む齊藤）未月がすごく身体を張ってくれるんですが、でもみんなで球際とか負けずに戦った小さなことが勝利につながった。まず『全員で守る』という基本のところに戻れたので、自分たちがじっくり冷静に守れたんだと思う。ただ、守備のところでのアプローチは会場の雰囲気が作ってくれた部分もあるので、それが常にできるようにレベルアップしたいです」
 
　２-０で勝利を収めた試合後、逞しい言葉が返ってきた。さらに彼の熱い言葉は続いた。
「みんなで『どんな時も下を向かずにやっていこう』と話していた。あとは完全アウェーの中で駆けつけてくれたサポーターのためにも勝ちたかった」
 

　勝利を告げるタイムアップのホイッスルが鳴り響いた後、メインスタンドにいた約20人の日本サポーターに向かって大きくガッツポーズを見せたように、周りへの感謝を熱い言葉で発した。
 
「W杯出場は決まりましたが、連覇を狙いたいので、個人としてもチームとしても、もっとやっていきたい」
 
　大一番でひと皮むけた感のあるハイスペックな大型ボランチは、自らの武器をさらに有効活用させようとしている。準決勝のサウジアラビア戦での出番は流動的だが、この試合で見せた気迫と闘志こそが、彼のあるべき基準となるなら、世界で戦うポテンシャルは十分にあると言っていい。
 
取材・文●安藤隆人（サッカージャーナリスト）