いかにスペースを創出できるか――
バルセロナは伝統的に下部組織から、サイドには独力でディフェンスをはがせる選手が配置される。その象徴が、リオネル・メッシだろう。1対1で勝ち切れることで、相手のポジション的優位を簡単に崩せる。その優位は、チーム全体に波及する。
例えば、メッシは右サイドから中に入って、左サイドから中にランニングする選手に左足でパスを出すのを得意とするが、相手のマーキングを動かすことによって、味方がアドバンテージを得られている好例だと言えよう。
例えば、メッシは右サイドから中に入って、左サイドから中にランニングする選手に左足でパスを出すのを得意とするが、相手のマーキングを動かすことによって、味方がアドバンテージを得られている好例だと言えよう。
そして現在の神戸はイニエスタを中心に、この感覚を共有しつつある。
「前を向け、というメッセージがパスにあるんです」
神戸の選手たちは感激したように語っているが、ボールを受けに選手が下がり、その背後を誰かが取って、そこにパスが出るという、スペースを創り出してチャンスを創る動きが、自然にできつつある。もっとも、それはまだまだ、イニエスタ次第のところはあるのだが……。
いかにスペースを創出できるか――。そこにサッカーの真髄がある。
文:小宮 良之
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月には『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たした。