チームの目標を達成することが「僕の目標」

開幕戦のヘルタ・ベルリン戦、加入からわずか6日でデビューを飾った。いきなりのスタメンに、チーム事情が窺えるが、同時に久保の能力の高さ、そしてクラブからの期待の高さも改めて感じられた。 (C) Getty Images
ホームで1-1の引き分けに終わったことにより、試合後の久保は、さすがに悔しそうな表情を見せていた。勝てるゲームだったという思いはあったことだろう。それでも試合後には、「すごいチャンスがあったんで。後半とか特に。決めてたら、勝っていた。残念ですけど、切り替えて。勝点1は取れたので」と、落ち着いた様子で振り返っていた。
クラブにとっては、久しぶりの1部リーグでの、久しぶりのゴールがあり、久しぶりの勝点なのだ。その価値を、新加入の久保もしっかりと分かっている。
クラブにとっては、久しぶりの1部リーグでの、久しぶりのゴールがあり、久しぶりの勝点なのだ。その価値を、新加入の久保もしっかりと分かっている。
手応えも掴んでいる。流れを作り出し、チャンスを生み出した。
「まあ欲を言えば、点を取りたかったですね。やれるな、という感じはあります。自分のコンディションも、もっと上がると思うんで。まだ100パーセントじゃないと思うし、もっともっとやれると思います」
「どんどん慣れて、どんどんボールが出てくるようにしないと。僕のところでチャンスを作れるように、自分のコンディションを上げていけば、もっとチャンスを作っていけると思う。そこは大丈夫かな、と思います」
ニュルンベルクは、今シーズンのブンデスリーガ(1部)で最も人件費の少ないクラブのひとつだ。お金で、満足のいく補強をすることはできない。既存の選手で戦っていくしかない。ないものねだりをしたり、戦力不足を嘆いたりしている暇はない。チームとしての結束が必要不可欠なのだ。
「チームの目標も(1部)残留なんで、その目標のためにやる、というのが僕の目標でもあります。どこまで行ける、とかはそこまで考えないで、毎試合毎試合、勝点を拾っていくのが大事かなと思います」
チームのために――。
そのためには、自分の力を最大限に発揮していかなければならない。代表ウィークによる中断期は、そのための重要な時間となる。攻撃に変化をつけられる貴重な選手として、今後、その役割を十二分に果たしていくために……。
文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日生まれ。秋田県出身。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2018-19シーズンからは元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU16監督を務める。「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)、「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」(ナツメ社)執筆。オフシーズンには一時帰国して「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。