J1クラブに加え、J2クラブに選手が活路を求める理由は?

元々アタッカーだった起はSBにコンバートをされて、才能が開花。来季から山口でプレーする権利を掴み取った。写真:森田将義

愛媛入りが決まった中川。オフザボールの動きに長けたアタッカーだ。写真:森田将義
複数のプロ選手を輩出するもうひとつの理由は、Jクラブのニーズを掴んでいることだ。
ブラジル代表のマルセロ(レアル・マドリー)やダニエウ・アウベス(パリ・サンジェルマン)のように、一級品のテクニックとスピードを持った選手がSBを務めるのが世界の潮流と判断。アタッカーとしてもプロを狙えた起を左SBにコンバートした。Jクラブからのオファーを受けながらも大学進学を決断した荒木遼太(3年)も同じようにSBの選手で、人材難が指摘されるポジションの選手育成に力を注いでいる。
また、プロ入りを狙える選手が複数いることによるメリットも存在する。
中川を獲得した愛媛は当初、村田に興味を示していた。しかし、村田はボールを持った時に力を発揮するタイプで、愛媛はオフ・ザ・ボールで勝負できる選手を探していたため、内野監督が推薦したのが中川だったという。怪我明けで練習参加した中川は練習試合で得点をマークし、契約を掴み取った。
村田も自分の特徴が発揮しやすいポゼッションサッカーを志向する岐阜でプロ入りを掴み、特別指定選手としてすでにJリーグのピッチに立っている。両選手とも、自分の持ち味が活きる良い環境を選んだと言えるだろう。
そして、他とは違うのは、リーグのカテゴリーを問わずに積極的にプロ入りを薦めている点だ。以前と比べて、J2への加入を厭わない選手が増えたとはいえ、いまだに「J2なら大学進学」という考えを持つ指導者や保護者が多い。実際に起も「なんで、こんなに速くJ2入りを決めたのか。J1からのオファーを待てば良かったのに」と多くの人に言われたという。
興國高がJ2入りを薦めているのには理由があり、内野監督はこう話す。
「卒業後すぐにヴィッセル神戸に入った田代容輔はスタメンに定着できず引退した。古橋亨悟は中央大を経て岐阜に行き、ヴィッセルの中心選手になりかけている。ふたりが僕にとっての転機だった」
実際に今季清水入りを果たしたMF西村恭史はプロの壁に苦しんでいる。J1でもすぐに試合に出られると睨んでいたが、興國高の最高傑作と評価されていた男は出場機会を得られていない。
アタッカーの場合、助っ人外国人との競争もあり、J1で試合に出るのは想像以上にハードルが高い。古橋が岐阜で開幕戦から試合に出られたのは、J1ではなくJ2だったという事実もある。古橋をモデルケースに、「プロは試合に出てナンボ」という考えが固まり、今年Jリーグ入りを掴んだ3選手にもアドバイスをしたという。
プロ選手を輩出することを第一に考えているが、もちろん勝負へのこだわりも捨てていない。監督・選手ともに目指すのは日本一のチームだ。今年こそ激戦区・大阪を勝ち抜いて選手権の舞台にたどり着き、真の強豪へとステップアップを果たせるか、期待したい。
取材・文●森田将義(フリーライター)
ブラジル代表のマルセロ(レアル・マドリー)やダニエウ・アウベス(パリ・サンジェルマン)のように、一級品のテクニックとスピードを持った選手がSBを務めるのが世界の潮流と判断。アタッカーとしてもプロを狙えた起を左SBにコンバートした。Jクラブからのオファーを受けながらも大学進学を決断した荒木遼太(3年)も同じようにSBの選手で、人材難が指摘されるポジションの選手育成に力を注いでいる。
また、プロ入りを狙える選手が複数いることによるメリットも存在する。
中川を獲得した愛媛は当初、村田に興味を示していた。しかし、村田はボールを持った時に力を発揮するタイプで、愛媛はオフ・ザ・ボールで勝負できる選手を探していたため、内野監督が推薦したのが中川だったという。怪我明けで練習参加した中川は練習試合で得点をマークし、契約を掴み取った。
村田も自分の特徴が発揮しやすいポゼッションサッカーを志向する岐阜でプロ入りを掴み、特別指定選手としてすでにJリーグのピッチに立っている。両選手とも、自分の持ち味が活きる良い環境を選んだと言えるだろう。
そして、他とは違うのは、リーグのカテゴリーを問わずに積極的にプロ入りを薦めている点だ。以前と比べて、J2への加入を厭わない選手が増えたとはいえ、いまだに「J2なら大学進学」という考えを持つ指導者や保護者が多い。実際に起も「なんで、こんなに速くJ2入りを決めたのか。J1からのオファーを待てば良かったのに」と多くの人に言われたという。
興國高がJ2入りを薦めているのには理由があり、内野監督はこう話す。
「卒業後すぐにヴィッセル神戸に入った田代容輔はスタメンに定着できず引退した。古橋亨悟は中央大を経て岐阜に行き、ヴィッセルの中心選手になりかけている。ふたりが僕にとっての転機だった」
実際に今季清水入りを果たしたMF西村恭史はプロの壁に苦しんでいる。J1でもすぐに試合に出られると睨んでいたが、興國高の最高傑作と評価されていた男は出場機会を得られていない。
アタッカーの場合、助っ人外国人との競争もあり、J1で試合に出るのは想像以上にハードルが高い。古橋が岐阜で開幕戦から試合に出られたのは、J1ではなくJ2だったという事実もある。古橋をモデルケースに、「プロは試合に出てナンボ」という考えが固まり、今年Jリーグ入りを掴んだ3選手にもアドバイスをしたという。
プロ選手を輩出することを第一に考えているが、もちろん勝負へのこだわりも捨てていない。監督・選手ともに目指すのは日本一のチームだ。今年こそ激戦区・大阪を勝ち抜いて選手権の舞台にたどり着き、真の強豪へとステップアップを果たせるか、期待したい。
取材・文●森田将義(フリーライター)