月収は3650パーセントのアップへ!
ブレーメン戦では、相当ナーバスになっていた。憧れていた劇場が、目の前にあるのだ。ドキドキも最高潮だっただろう。交代出場する時、すね当てを付けるのを忘れていたほどである。だがピッチに立つと、あとは自分のプレーをするだけだった。
チームに勝点1をもたらす活躍を見せた新星に、キャプテンのヴァルデマール・アントンは「みんな、誇りに思っているよ。すっごく嬉しい!」と語り、GKミヒャエル・エッサーは「どんどん進んでいくよね。どこまで行くか、もうドキドキだよ」と喜んだ。プロ生活が長い彼らでも、ヴァイダントのような例はめったに経験したことがないはずだ。
チームに勝点1をもたらす活躍を見せた新星に、キャプテンのヴァルデマール・アントンは「みんな、誇りに思っているよ。すっごく嬉しい!」と語り、GKミヒャエル・エッサーは「どんどん進んでいくよね。どこまで行くか、もうドキドキだよ」と喜んだ。プロ生活が長い彼らでも、ヴァイダントのような例はめったに経験したことがないはずだ。
チームマネジャーのホルスト・ヘルトは、ヴァイダントとの契約について、「試合後に彼の父親と話し、合意に達したよ。あとは、会長のオッケーをもらうだけだ」と、試合後に明かしていた。プロ契約となれば、月収は1万5000ユーロ(約195万円)になるとみられる。わずか3か月で、実に3650パーセントのアップだ!
ピアノが趣味というヴァイダントは現在、ハノーファー大学で経営学を学んでいる。住まいは、友だちとのシェアハウス。卒業後は、父親の税理士事務所を継ぐものと思われていた。だから、華やかな話が周りで飛び交っていても、ヴァイダントは謙虚な姿勢を崩さない。
夢にまで見た舞台で、夢のような話が続いている。だが、これは夢ではない。
ブンデスリーガの各クラブの育成アカデミーが充実し、そこに入れなければプロ入りはできないものと、多くの人が思っている。確かにそうかもしれない。ヴァイダントだって、自分が9部からプロになれるとは思っていなかっただろう。でも、道はいつでも繋がっているのだ。
こうした“おとぎ話”があるから、やはりサッカーは面白い。
文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日生まれ。秋田県出身。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2018-19シーズンからは元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU16監督を務める。「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)、「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」(ナツメ社)執筆。オフシーズンには一時帰国して「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。