「あいつは練習中にボールから逃げるんだ(笑)」
いくらあらゆる情報が行き届かない時代とはいえ、あまりに仰天のエピソードの数々。周囲のチームメイトたちは、カイザーの嘘に気付かなかったのだろうか? フラメンゴで共にプレーした元ブラジル代表FWのベベットは、「もちろん分かっていたさ」と笑いながら語っている。
「あいつに才能がないことは知っていたよ。だって、あいつは練習中もボールから逃げるんだから(笑)。でも、とにかく口が達者でね。あいつが何かを言うと、『そりゃあそうだな』って、なぜか納得してしまうんだ。あいつと話したら、誰だってあっという間に、口車に乗せられてしまうと思うよ」
「あいつに才能がないことは知っていたよ。だって、あいつは練習中もボールから逃げるんだから(笑)。でも、とにかく口が達者でね。あいつが何かを言うと、『そりゃあそうだな』って、なぜか納得してしまうんだ。あいつと話したら、誰だってあっという間に、口車に乗せられてしまうと思うよ」
また、元ブラジル代表のキャプテンで、ベベットと同じくフラメンゴで同僚だったカルロス・アウベルトは生前、カイザーの人間性について以下のように明かしている。
「彼はいつも、チームメイトから好かれていたよ。誰もが、彼のことを好きだったと思う。人柄が良くて、嫌いになれなかったんだ。だからクラブの幹部も、とくに気にすることはなかったんだろうね」
そんな現在55歳となったカイザーは、『The SUN』の取材に対し、嘘に嘘を重ねたサッカー人生を振り返り、雄弁に語っている。
「とにかく、プロとして私が生き残るためには、誰かを騙すしかなかった。でも、誰も私を解雇できなかったね。私がサインをして、すぐに出ていく。その繰り返しだった。
ブラジルでサッカー選手は、一種のステータスなんだ。だから、私は毎晩ナイトクラブへ行き、そして『サッカー選手だ』と言うと群がってくる女を抱いたよ。一日に3人と寝ることも珍しくなかった。
私みたいに貧しい場所から出てきた人間がブラジルで成功するためには、サッカーで財を成すか、ギャングになるか、女と上手くやるか、その3つしかなかった。私はアルコール依存症の母親に育てられ、何とか生き延びようと必死だった。だから、いくら批判されようとも、嘘をついたことに罪悪感はない」
ちなみに『The SUN』によれば、カイザーは現在、女性向けのパーソナルトレーナーとして“本当に”汗を流しているという。
あらゆる技術が進化し、各クラブのスカウティングスキルもアップしたいまでは、カイザーのような選手が生まれることはあり得ず、なんとも不思議な話ですらある。