世間の目に晒され、経営陣の支援が約束されない場所。
とはいえ、監督としての過ちが逐一スポットライトを浴び、非難や酷評を受ける対象となるレンジャーズが、トップチームの指揮官初経験となるジェラードにとって、ステップアップとして最適かと訊かれれば答は「ノー」だ。
レンジャーズ指揮官として成功を収めたスーネスでさえ、リバプールや、古豪のニューカッスル、トルコの強豪ガラタサライと比べても、「レンジャーズでの監督時代ほど世間の目に晒されたことはない」と、英紙『Sunday Times』で明かしている。
スコットランドのプレミアシップは、伝統的にセルティックとレンジャーズの二頭立て。1位以外は敗者でしかない――ファンの間でのこの意識は現在も不変だ。
フロントは資金面でのバックアップを新監督候補に約束してもいる。だが、ただでさえ、戦力で勝る宿敵セルティックは、チャンピオンズ・リーグ(CL)出場による収入増を背景に、優に2、3倍の補強予算を移籍市場に投じて更なる戦力アップを図ることもできる。
レンジャーズ指揮官として成功を収めたスーネスでさえ、リバプールや、古豪のニューカッスル、トルコの強豪ガラタサライと比べても、「レンジャーズでの監督時代ほど世間の目に晒されたことはない」と、英紙『Sunday Times』で明かしている。
スコットランドのプレミアシップは、伝統的にセルティックとレンジャーズの二頭立て。1位以外は敗者でしかない――ファンの間でのこの意識は現在も不変だ。
フロントは資金面でのバックアップを新監督候補に約束してもいる。だが、ただでさえ、戦力で勝る宿敵セルティックは、チャンピオンズ・リーグ(CL)出場による収入増を背景に、優に2、3倍の補強予算を移籍市場に投じて更なる戦力アップを図ることもできる。
筆者は、そもそも現経営陣に対する不信感から、レンジャーズの要請を断るべきだと考えている口だ。短命に終わったペドロ・カイシーニャ監督は就任自体が疑問だったが、続く昨年10月からのグレアム・マーティ現暫定体制も、トップチームで指揮を執ったことのないU-20チーム監督の内部昇格がファンの間では不評だった。
その後を受ける正式な監督として、そのキャリアにおいてトップチームを率いた経験のない、他クラブのU-18チーム監督に白羽の矢を立てるフロントに、明確なプランや長期的なビジョンがあるとは思えない。
もちろん、そこはリーダーシップの塊のようなジェラードだ。当人が採用を望んでいると言われる、リバプールの先輩でスコットランド人のガリー・マカリスターを頼れる右腕とし、レンタル移籍も駆使した賢い補強と骨のあるチーム作りで、着実にセルティックとの差を詰め始めないとも限らない。ただし、それは、現役時代のハイライトでもある「イスタンブールの奇跡」で、自らのゴールで3点ビハインドからの逆転によるCL制覇を成し遂げた時に匹敵する難題だろう。
仮にレンジャーズのオファーにジェラードが首を縦に振るのであれば、その勇断が将来的なリバプールのトップチーム指揮官就任への大きな迂回を招く誤断とならないことを祈るしかない。
文●山中忍
【著者プロフィール】
やまなか・しのぶ/1966年生まれ、青山学院大学卒。94年渡欧。イングランドのサッカー文化に魅せられ、ライター&通訳・翻訳家として、プレミアリーグとイングランド代表から下部リーグとユースまで、本場のサッカーシーンを追う。西ロンドン在住で、ファンでもあるチェルシーの事情に明るい。