CL圏内入りも今なら十分に可能性あり!

チーム飛躍の立役者のひとり、グリリチュはアンカーとして新境地を切り拓いた。 (C) Getty Images

凄まじい突破力と決定力を見せているニャブリ。リオ五輪得点王は、ドイツA代表でも重要な役割を担えるだけの力を有している。 (C) Getty Images
グリリチュというピースがハマったことで、リベロを務めるケビン・フォクトもまた、調子を取り戻している。
一時期は軽率なパスミスが目立ち、地元紙にはレギュラー落ちを要求する記事も上がっていたほどだった。だが、全てがフォクト個人の問題だったわけではない。以前ならボールを出せていたところに味方選手がいない、あるいはしっかりと預けたはずのボールが奪われてショートカウンターに持ち込まれるというシーンが多いという背景もあったからだ。
ここ最近は、最後尾のビルドアップから、以前のような鋭いパスを前線に送っている。
また、戦い方に変化が生まれた点にも注目だ。常に自分たちでボールを保持しようとせず、状況に応じて相手にボールを持たせ、奪ったところで素早く攻撃に転じるなど、バリエーションを増やした。
そのため両サイドには、スピードと縦への推進力があるニコ・シュルツ、パベル・カデラベクを起用。相手に、守備組織を立て直させる隙を与えず、一気に相手DFライン裏のスペースを攻略してしまう。大量得点で勝利したケルン戦(6-0)やライプツィヒ戦では、両サイドから何度も相手の守備を切り崩していった。
戦い方が整理されたことに加え、セルジュ・ニャブリ、アンドレイ・クラマリッチ、マルク・ウートというオフェンシブトリオが、それぞれ持ち味味を発揮している点も大きい。
特にニャブリは、切れ味鋭いドリブルから精度の高いシュートとパスで、得点とアシストを量産。ロシア・ワールドカップのドイツ代表メンバー入りも現実味を帯びてきている。ウートは得点ランキング2位の14得点。クラマリッチも縦一辺倒になりがちな攻撃に変化を加える存在として、貴重な働きをしている。
ナーゲルスマン監督も、今のチーム状態に大きな手応えを感じている。「残り3試合全てに勝つことができたら、最終順位で4位以内に入れることをイメージしている」と『ビルト』紙に語っていた言葉は、決して誇張表現ではない。今の調子ならば、十分にその可能性はある。
文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。
一時期は軽率なパスミスが目立ち、地元紙にはレギュラー落ちを要求する記事も上がっていたほどだった。だが、全てがフォクト個人の問題だったわけではない。以前ならボールを出せていたところに味方選手がいない、あるいはしっかりと預けたはずのボールが奪われてショートカウンターに持ち込まれるというシーンが多いという背景もあったからだ。
ここ最近は、最後尾のビルドアップから、以前のような鋭いパスを前線に送っている。
また、戦い方に変化が生まれた点にも注目だ。常に自分たちでボールを保持しようとせず、状況に応じて相手にボールを持たせ、奪ったところで素早く攻撃に転じるなど、バリエーションを増やした。
そのため両サイドには、スピードと縦への推進力があるニコ・シュルツ、パベル・カデラベクを起用。相手に、守備組織を立て直させる隙を与えず、一気に相手DFライン裏のスペースを攻略してしまう。大量得点で勝利したケルン戦(6-0)やライプツィヒ戦では、両サイドから何度も相手の守備を切り崩していった。
戦い方が整理されたことに加え、セルジュ・ニャブリ、アンドレイ・クラマリッチ、マルク・ウートというオフェンシブトリオが、それぞれ持ち味味を発揮している点も大きい。
特にニャブリは、切れ味鋭いドリブルから精度の高いシュートとパスで、得点とアシストを量産。ロシア・ワールドカップのドイツ代表メンバー入りも現実味を帯びてきている。ウートは得点ランキング2位の14得点。クラマリッチも縦一辺倒になりがちな攻撃に変化を加える存在として、貴重な働きをしている。
ナーゲルスマン監督も、今のチーム状態に大きな手応えを感じている。「残り3試合全てに勝つことができたら、最終順位で4位以内に入れることをイメージしている」と『ビルト』紙に語っていた言葉は、決して誇張表現ではない。今の調子ならば、十分にその可能性はある。
文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。

主力を引き抜かれるなどの厳しい状況でも、しっかり対応してこれを乗り越える術を見つけ出し、再びチームを浮上させたナーゲルスマン監督。30歳の指揮官は、さらにその価値を高めたと言えよう。 (C) Getty Images