「フライブルクらしく」が彼らの誇り

後半戦は2勝5分け3敗と苦しんでいるが、信念を失うことはない。ちなみに代表ウィーク明け初戦(28節)は、2位シャルケとのアウェーマッチ。シャルケが引き分け以下の場合、バイエルンの優勝が決まる可能性がある。 (C) Getty Images
監督のクリスティアン・シュトライヒは常々、ファンに呼び掛けている。
「我々は、若い選手を多く抱えている。ミスをした時に神経質なファンの反応があると、怖がって次からボールを蹴り出してしまう。でも、それではダメなんだ。我々は意図を持ってボールを動かすことを大事にしている。ミスをして良いわけではない。だがミスを怖がらずにプレーに向き合う環境が大切なんだ」
その思いは、ファンにしっかりと届いているようだ。もちろん選手がミスをしたりすれば、ファンからのブーイングも起きる。不必要に守備陣でボールを回していると、「何を怖がっているんだ!」とスタンドがざわつき出す。でも次の瞬間には、また応援の声が飛び交い、選手のプレーを後押しするのだ。
キャプテンを務めるFWニルス・ペーターゼンは、「負けている試合でも、まるで4‐0で勝っているかのような気持ちを持たせてくれるところは、おそらくここだけじゃないだろうか。鳥肌が立つほど素晴らしい」と、ファンのサポートに感謝の言葉を口にしていた。
そんな、騒動とは無縁のフライブルクが、ドイツメディアの注目を集めた時があった。3月上旬に『ビルト』紙が、バイエルンがユップ・ハインケスの後任監督候補としてシュトライヒ監督と最初のコンタクトを取ったと報じたのだ。
また、ハインケスの「シュトライヒには、最大限のリスペクトを持っている。彼の仕事ぶりを気に入っているよ。スポーツ面だけではなく、人間としても素晴らしい。素晴らしい監督だ」と賛辞するコメントも合わせて紹介された。
直後に行なわれたバイエルン戦では、試合後のミックスゾーンにドイツ人記者がひっきりなしに詰めかけ、フライブルク、バイエルン両チームの選手に、このことを訊ねていた。
だが、当のシュトライヒ本人が「バイエルンでは、毎週のように新しい名前が噂に上がっている。私の名前が一度も上がらなかったら、それはそれでどうかと思うよ。コンタクトは何ひとつない。バイエルンで監督をやれる人物は、十分にいる。私はフライブルクの監督だ」と明言して、噂を一蹴。あっという間に、またクラブは平穏に包まれた。
「フライブルクらしく」
その言葉が意味することを、みんなが理解している。そしてこの町の人々は皆、そうであることを誇りに思っているのだ。
文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。
「我々は、若い選手を多く抱えている。ミスをした時に神経質なファンの反応があると、怖がって次からボールを蹴り出してしまう。でも、それではダメなんだ。我々は意図を持ってボールを動かすことを大事にしている。ミスをして良いわけではない。だがミスを怖がらずにプレーに向き合う環境が大切なんだ」
その思いは、ファンにしっかりと届いているようだ。もちろん選手がミスをしたりすれば、ファンからのブーイングも起きる。不必要に守備陣でボールを回していると、「何を怖がっているんだ!」とスタンドがざわつき出す。でも次の瞬間には、また応援の声が飛び交い、選手のプレーを後押しするのだ。
キャプテンを務めるFWニルス・ペーターゼンは、「負けている試合でも、まるで4‐0で勝っているかのような気持ちを持たせてくれるところは、おそらくここだけじゃないだろうか。鳥肌が立つほど素晴らしい」と、ファンのサポートに感謝の言葉を口にしていた。
そんな、騒動とは無縁のフライブルクが、ドイツメディアの注目を集めた時があった。3月上旬に『ビルト』紙が、バイエルンがユップ・ハインケスの後任監督候補としてシュトライヒ監督と最初のコンタクトを取ったと報じたのだ。
また、ハインケスの「シュトライヒには、最大限のリスペクトを持っている。彼の仕事ぶりを気に入っているよ。スポーツ面だけではなく、人間としても素晴らしい。素晴らしい監督だ」と賛辞するコメントも合わせて紹介された。
直後に行なわれたバイエルン戦では、試合後のミックスゾーンにドイツ人記者がひっきりなしに詰めかけ、フライブルク、バイエルン両チームの選手に、このことを訊ねていた。
だが、当のシュトライヒ本人が「バイエルンでは、毎週のように新しい名前が噂に上がっている。私の名前が一度も上がらなかったら、それはそれでどうかと思うよ。コンタクトは何ひとつない。バイエルンで監督をやれる人物は、十分にいる。私はフライブルクの監督だ」と明言して、噂を一蹴。あっという間に、またクラブは平穏に包まれた。
「フライブルクらしく」
その言葉が意味することを、みんなが理解している。そしてこの町の人々は皆、そうであることを誇りに思っているのだ。
文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。