可能性を信じられるところまでは戻ってきた
後期開幕戦となったボルシアMG戦で、ルーテンベック監督はボランチの位置からキャプテンのマティアス・レーマンを外し、マルコ・ヘーガーとサリフ・エズジャンの2人を起用した。
単独での守備力・運動量では、レーマンに分がある。身体を張り、ボールを奪い、どこまでも走り続ける闘将は、今でも必要な戦力であるのは間違いない。失点が続いていた前半戦のケルンでは、とても怖くて考えたくない起用法だったかもしれない。
だが、ルーテンベック監督は、守れる選手、走れる選手で相手の攻撃をしのぎ切るサッカーよりも、全体的なゲームコントロール能力を上げ、得点を取り切れるチームを作ろうとしている。
2トップを採用し、守備の局面で難があるために起用法が難しいとされているゲームメーカーのミロシュ・ヨイッチもピッチに送り出した。
この積極的な采配が、決勝点を生んだ。今冬にシュツットガルトから移籍してきたジモン・テロッデがアディショナルタイム6分、値千金のゴールを決めたのだ。最後まで得点を奪う姿勢を見失わなかったチームの思いが、この劇的な結末に結び付いた。
『ビルト』紙は「サッカーの神は、ケルンの奇跡に興味があるようだ」という見出しをつけて報じた。
殊勲者のテロッデは、「何て表現すればいいのか分からないよ。あれだけ遅い時間帯に僕のゴールが決まった。何て幸運なんだ! あの後だったら、もう失点することはないからね。これでみんな、笑顔で家に帰るよ」と喜んだ。
2連勝を飾ったケルンは、これで17位ハンブルクとは6、16位ブレーメンとは7と、それぞれ勝点差を縮めた。まだ射程圏内に捉えるところまでは来ていないが、1か月前と比べれば、状況は劇的に変わった。可能性を信じられるところまでは戻ってきた。
また、戦力も整ってきている。キャプテンのヨナス・ヘクターがこのボルシアMG戦からようやく復帰。12月に肺炎で戦線離脱した大迫勇也のコンディションはまだ万全ではなく、試合復帰にはもう少し時間がかかると見られているが、戻ってこれば間違いなくチーム力はまたひと回り上がるだろう。
ひょっとしたら、この先、ブンデスリーガ史に残る「追い上げ劇」が見られるかもしれない。
文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。
単独での守備力・運動量では、レーマンに分がある。身体を張り、ボールを奪い、どこまでも走り続ける闘将は、今でも必要な戦力であるのは間違いない。失点が続いていた前半戦のケルンでは、とても怖くて考えたくない起用法だったかもしれない。
だが、ルーテンベック監督は、守れる選手、走れる選手で相手の攻撃をしのぎ切るサッカーよりも、全体的なゲームコントロール能力を上げ、得点を取り切れるチームを作ろうとしている。
2トップを採用し、守備の局面で難があるために起用法が難しいとされているゲームメーカーのミロシュ・ヨイッチもピッチに送り出した。
この積極的な采配が、決勝点を生んだ。今冬にシュツットガルトから移籍してきたジモン・テロッデがアディショナルタイム6分、値千金のゴールを決めたのだ。最後まで得点を奪う姿勢を見失わなかったチームの思いが、この劇的な結末に結び付いた。
『ビルト』紙は「サッカーの神は、ケルンの奇跡に興味があるようだ」という見出しをつけて報じた。
殊勲者のテロッデは、「何て表現すればいいのか分からないよ。あれだけ遅い時間帯に僕のゴールが決まった。何て幸運なんだ! あの後だったら、もう失点することはないからね。これでみんな、笑顔で家に帰るよ」と喜んだ。
2連勝を飾ったケルンは、これで17位ハンブルクとは6、16位ブレーメンとは7と、それぞれ勝点差を縮めた。まだ射程圏内に捉えるところまでは来ていないが、1か月前と比べれば、状況は劇的に変わった。可能性を信じられるところまでは戻ってきた。
また、戦力も整ってきている。キャプテンのヨナス・ヘクターがこのボルシアMG戦からようやく復帰。12月に肺炎で戦線離脱した大迫勇也のコンディションはまだ万全ではなく、試合復帰にはもう少し時間がかかると見られているが、戻ってこれば間違いなくチーム力はまたひと回り上がるだろう。
ひょっとしたら、この先、ブンデスリーガ史に残る「追い上げ劇」が見られるかもしれない。
文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。