ネット上では好意的な意見が飛び交う。
敵地ムルシアで、アルナイスのことを知る者はほとんどいなかった。試合後、チームバスに乗り込もうとした彼に、ひとりのムルシア・サポーターが話しかけてきた。
「君は何ていう選手だい?」
アルナイスは笑みを浮かべながら、「ホセだ」と答えた。翌朝、このムルシア・サポーターは驚いたことだろう。アルナイスは複数の新聞の一面を飾ったからだ。主要メディアに大きく取り上げられるのは、もちろん初めての経験だった。
注目を浴びることで自分を見失ってしまう若手は少なくない。だが、バルサBのジェラール・ロペス監督曰く、その懸念は杞憂に終わりそうだ。「記事が載った日にホセと話をしたが、地に足が付いていた。浮かれる素振りはなく、集中して練習に励んでいる」
テレビでは“バルサ次世代のクラック”として、アルナイスの映像が繰り返し流され、SNSやネット上では、好意的な意見が飛び交った。
「一刻も早くトップチームに」
「リオネル・メッシと相性がいいのではないか」
「パコ・アルカセルよりアルナイス」
期待が高まるのも当然だ。このところ、バルサBから昇格してきた選手は、なかなかトップチームに定着できずにいる。とりわけ前線の選手となると皆無に近く、カンテラを愛するファンの心が躍るのも無理はない。
持ち味はスピードを活かした縦方向への鋭いドリブル。優れた技巧を駆使した強気なプレーが持ち味で、左サイドからカットインし、シュートまで持ち込む姿は頼もしさすら感じさせる。以下は、バルセロナに拠点を置く一般紙『El Periodico』に掲載されたジェラール監督のアルナイス評である。
「抜群のスピードと突破力があり、両足を使えるのも魅力だ。前線の3つのポジションで機能し、ハードワークも惜しまない。課題もあるが、トップチームでプレーする準備はできている」
とはいえ今シーズンは、状況を見ながらトップチームとバルサBを行き来することになるだろう。冬には負傷中のウスマンヌ・デンベレも復帰してくるため、すぐにカンプ・ノウのベンチに座るのは容易ではない。
だが、バルサBのチームメイトであるカルレス・アレニャが、「とてもまじめでいい奴」と評するアルナイスなら、それで腐るようなことはないだろう。トップ昇格を焦らず、いまのプレーを続けていればいずれチャンスは巡ってくるはずだ。バルサBで結果を残すことがトップチームへの一番の近道だということを、きっとこの若者は知っている。
※ワールドサッカーダイジェスト2017年12月7日号より転載。
文:豊福 晋
【著者プロフィール】
1979年、福岡県生まれ。2001年のミラノ留学を経て、フリーで取材・執筆活動を開始。イタリア、スコットランドと拠点を移し、09年夏からはスペインのバルセロナに在住。リーガ・エスパニョーラを中心に、4か国語を操る語学力を活かして欧州フットボールシーンを幅広く、ディープに掘り下げている。独自の視点から紡ぐ、軽妙でいて深みのある筆致に定評がある。
「君は何ていう選手だい?」
アルナイスは笑みを浮かべながら、「ホセだ」と答えた。翌朝、このムルシア・サポーターは驚いたことだろう。アルナイスは複数の新聞の一面を飾ったからだ。主要メディアに大きく取り上げられるのは、もちろん初めての経験だった。
注目を浴びることで自分を見失ってしまう若手は少なくない。だが、バルサBのジェラール・ロペス監督曰く、その懸念は杞憂に終わりそうだ。「記事が載った日にホセと話をしたが、地に足が付いていた。浮かれる素振りはなく、集中して練習に励んでいる」
テレビでは“バルサ次世代のクラック”として、アルナイスの映像が繰り返し流され、SNSやネット上では、好意的な意見が飛び交った。
「一刻も早くトップチームに」
「リオネル・メッシと相性がいいのではないか」
「パコ・アルカセルよりアルナイス」
期待が高まるのも当然だ。このところ、バルサBから昇格してきた選手は、なかなかトップチームに定着できずにいる。とりわけ前線の選手となると皆無に近く、カンテラを愛するファンの心が躍るのも無理はない。
持ち味はスピードを活かした縦方向への鋭いドリブル。優れた技巧を駆使した強気なプレーが持ち味で、左サイドからカットインし、シュートまで持ち込む姿は頼もしさすら感じさせる。以下は、バルセロナに拠点を置く一般紙『El Periodico』に掲載されたジェラール監督のアルナイス評である。
「抜群のスピードと突破力があり、両足を使えるのも魅力だ。前線の3つのポジションで機能し、ハードワークも惜しまない。課題もあるが、トップチームでプレーする準備はできている」
とはいえ今シーズンは、状況を見ながらトップチームとバルサBを行き来することになるだろう。冬には負傷中のウスマンヌ・デンベレも復帰してくるため、すぐにカンプ・ノウのベンチに座るのは容易ではない。
だが、バルサBのチームメイトであるカルレス・アレニャが、「とてもまじめでいい奴」と評するアルナイスなら、それで腐るようなことはないだろう。トップ昇格を焦らず、いまのプレーを続けていればいずれチャンスは巡ってくるはずだ。バルサBで結果を残すことがトップチームへの一番の近道だということを、きっとこの若者は知っている。
※ワールドサッカーダイジェスト2017年12月7日号より転載。
文:豊福 晋
【著者プロフィール】
1979年、福岡県生まれ。2001年のミラノ留学を経て、フリーで取材・執筆活動を開始。イタリア、スコットランドと拠点を移し、09年夏からはスペインのバルセロナに在住。リーガ・エスパニョーラを中心に、4か国語を操る語学力を活かして欧州フットボールシーンを幅広く、ディープに掘り下げている。独自の視点から紡ぐ、軽妙でいて深みのある筆致に定評がある。