アジアカップ初制覇へ、「なでしこ」の進化の過程

カテゴリ:日本代表

西森彰

2014年05月09日

仮想豪州のニュージーランド戦は消化不良に。

ニュージーランド戦の89分に決勝点を挙げたFW菅澤。内容は今ひとつも、若い力は確実に芽を出し始めている。 (C) SOCCER DIGEST

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 なでしこジャパンの次なる目標は、今月中旬にベトナムで開幕する女子アジアカップだ。連覇を目指すワールドカップのアジア地区最終予選を兼ね、上位5か国が本大会に出場できる。
 
 大阪・キンチョウスタジアムで行なわれた壮行試合の対戦相手はニュージーランド。“白いシダ”の愛称を持ち、前任のジョン・ハードマン監督がスピードとパワーを活かしたサッカーで世界大会の常連に導いた。日本がアジアカップの開幕戦で顔を合わせるオーストラリアとは、フィジカルの強さなど共通点がある。
 
 佐々木監督は「足下の技術もしっかりしていて、結構つなぐ力もある。現段階では、オーストラリアよりもニュージーランドのほうが上なんじゃないかな」と分析していた。
 
 そんな難敵を相手に、日本は前半の45分間を上手くコントロールした。有効だったのは、相手ボールを取り戻した後の前線へのロングフィード。力強く前に出ようとするニュージーランドの勢いをいなし、ペースを掴んだ。
 2日前の紅白戦では、こうしたシーンがなかなか見られず、佐々木監督も気にしていたが、前日のミーティングで選手に意識改革を促し、非公開練習でもチャレンジさせたという。そして、前半終了間際には、センターサークル付近から、宮間がピンポイントでゴール前に配球すると、最終ラインの裏をとった髙瀬愛実(I神戸)が、GKとの1対1を冷静に決めて、先制に成功した。
 
「合宿に入ってから、(髙瀬が)FWの軸としてやっていく中で、自分もいいボールを出したいと思っていましたし、ビデオを見ながら話し合いもしました。まだまだ十分ではありませんが、ひとつ良い結果が出てよかったです」(宮間)
 
 1点リードの後半途中から、佐々木監督は事前に公言していた通り、交代枠を積極的に使う。コンディションが今ひとつで試運転の意味合いが濃い澤穂希(I神戸)のほか、若手の菅澤優衣香(ジェフL)、初キャップの猶本光、乗松瑠華(ともに浦和L)、代表に返り咲いた丸山桂里奈(大阪高槻)、後藤三知(浦和L)の6名がピッチに送り込まれた。
 
「試合結果ももちろんですが、代表でのプレーが久しぶりの選手、初めての選手をできるだけピッチに立たせて、この雰囲気を経験させてやりたかった」(佐々木監督)
 
 これらの選手交代で、ややバランスを崩したうえに、試合途中からは夕立にも襲われた。終盤まで先発メンバーを残し、ペースを上げたニュージーランドに、一度は同点ゴールを奪われる。残り5分となって、宮間の右CKに飛び込んだ菅澤が、頭で合わせて勝ち越し。そのまま2-1で逃げ切ったものの、前半のような輝きは失われていた。
 
 佐々木監督は「前半は2/3が良くて1/3がダメ。後半は2/3がダメで、1/3が良かったという感じ。選手には『後半はプレーの予測や判断のスピードが落ちた。サポートなどの部分を含めて今後の練習で修正してくれ』と注文しました」と厳しめの評価だ。
 
 宮間も「最低限の結果は出せたと思いますが、連係の部分も含めて、全体的にまだまだやることがありますね。このメンバーの力を考えると、20パーセント、30パーセントしかできていません」と口にした。監督も選手も勝利の余韻に浸らず、修正すべき課題に意識を向けていた。
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