日本代表はなぜあっさりと点を取られたのか――失点シーンに潜む戦術的・個人的ミス

カテゴリ:日本代表

清水英斗

2017年11月16日

失点した理由のひとつは、森岡を投入したことだろう。

攻撃的な選手は、中盤のカバー意識が低い。この森岡のプレーも同様だった。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 ただし、それでも失点シーンについては課題が残る。
 
 89分良いプレーをしても、一瞬の油断によって失点すれば、せっかく耐え忍んだ努力が無駄になる。そういうギリギリの勝負だ。
 
 72分、左ウイングハーフのナセル・シャドリがボールを持って内へターンした場面。まず、対面した久保裕也が置き去りにされた。そして、隣りでカバーできるはずの右インサイドハーフ、森岡亮太は相手センターハーフのアクセル・ヴィツェルへのバックパスを先読みし、前に出てしまっている。攻撃タイプのMFは、このようなポジションを取りがち。本来ならば中盤のスペースに残り、仮にヴィツェルにパスが出たら、その時点で前に出て寄せるところだが。
 
 後追いになってしまった森岡のプレスバックも間に合わず、シャドリは久保と森岡の間をドリブルで通過した。一方、アンカーの山口蛍は、森岡にカバーを任せたのか、自分は行かず、その場にとどまる。対応を味方に任せた。
 
 そしてスルスルと抜けて行くシャドリに対し、吉田麻也が対応。しかし、ケヴィン・ミララスのサイド流れに引っ張られ、中央にポジションを回復したばかりの吉田は、万全の体勢で立ち向かえず。森岡も久保も間に合わず、山口も行かないため、攻撃優位の1対1がペナルティエリア内で生じてしまった。こうして4人は1人に突破され、吉田を抜いたシャドリから、最後はロメル・ルカクが決めている。
 
 なぜ、これほどあっさりとやられてしまうのか。
 
 個人の判断ミスはともかく、チームとして見るなら、理由のひとつは森岡を投入したことだろう。どうしても攻撃的な選手は、中盤のカバー意識が低い。最終予選の最終戦、サウジアラビア戦を思い返すと、柴崎岳が同じように中盤のカバーポジションを取れず、侵入を許したシーンに似ている。槙野が語ったように、攻撃の選手とは、いつでも前に行きたがる生き物なのだ。
 
 加えて、その攻撃的なインサイドハーフを、守備のハードワーカーとは言えない久保と並べたことが問題を深くした。これは采配を含めて、改善の余地があるのではないか。
 
 リズムの変化に虚を突かれたのも大きい。それまではパス、パス、クロスと、サイド攻撃を繰り返したベルギーが、いきなり中央へスルスルとドリブルで割って入ったプレーには意外性があった。何となくみんな「パスだろう。どこかで離すだろう」と決めつけ、相手のリズムに慣れすぎていた。意表をついて繰り出されるドリブルに、日本は非常に弱い。これも改善しなければならない。
 
 とはいえ、これで一旦は守備に目処が立った。次なる課題は、ボールを奪った後の攻撃のプレー。一歩一歩進むハリルジャパンだが、どうにか本大会に間に合うのだろうか。もう1試合も無駄にできない。ブラジル戦の前半のような後悔は、二度と経験したくないところだ。
 
取材・文:清水英斗(サッカーライター)
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