モウリーニョの言い分には頷けない部分も。
一方、マンチェスター・Uの中盤中央には、ダイナミズムをもたらすポール・ポグバも、リズムをコントロールできるマイケル・キャリックも怪我で不在。トップ下で先発したヘンリク・ムヒタリアンは、一時期のように自信が低下しているのか、攻守の両面で存在感が希薄であった。
加えて、前半は3バック右を務めたエリック・バイリーが、アザールのチェックを担ったことが、守備陣形の乱れと自陣のペナルティーエリア手前に空きスペースを生み出すことに繋がってしまった。
後半は、ファウルも厭わないなりふり構わぬ姿勢でアザールを何とか止めていたものの、一方でビハインドを追っての攻撃でモウリーニョは、最後にマルアン・フェライニを投入してのパワープレーという、堅守重視の入り方をした試合と同じ采配を選択した。
翌朝の国内紙には、チームを攻撃的に戦えなくした原因として、過去数試合でのモウリーニョの采配を改めて責める論調もあった。
たしかにルカクは、リバプール戦から7試合連続でノーゴールとなったが、見事なヘディングでチェルシーに決勝点をもたらしたアルバロ・モラタも、実は6試合ぶりのゴール。どちらが先制してもおかしくなかった時間帯に、ルカクの動き自体は上々で、エリア外からのシュートを枠内に飛ばしてもいた。
主砲の状態は上向いてきており、ポグバら数名の主力の復帰は11月後半と見込まれている。「ちょうどリーグが過密日程となる頃に、最高潮の調子を取り戻せれば」という、試合後のモウリーニョの発言にも一理ある。
但し、「引き分けが妥当だった」との言い分には頷けない。マンチェスター・Uが、フェライニの十八番でもある胸トラップからのボレーで同点に迫ったことをポルトガル人指揮官が引き合いに出していたのだとすれば、チェルシーには、点差を広げるチャンスがアザール、モラタ、バカヨコらに幾度となくあった。
「叩きに行く相手」というよりも、「叩きに行く時期」を誤ったモウリーニョ。敗戦後の収穫は、次節から再び守備重視の慎重策を採用しても、しばらくは口うるさいメディアと一部のファンが、「仕方ない」と見てくれそうなことだろうか。
文:山中忍
【著者プロフィール】
やまなか・しのぶ/1966年生まれ、青山学院大学卒。94年渡欧。イングランドのサッカー文化に魅せられ、ライター&通訳・翻訳家として、プレミアリーグとイングランド代表から下部リーグとユースまで、本場のサッカーシーンを追う。西ロンドン在住で、ファンでもあるチェルシーの事情に明るい。
加えて、前半は3バック右を務めたエリック・バイリーが、アザールのチェックを担ったことが、守備陣形の乱れと自陣のペナルティーエリア手前に空きスペースを生み出すことに繋がってしまった。
後半は、ファウルも厭わないなりふり構わぬ姿勢でアザールを何とか止めていたものの、一方でビハインドを追っての攻撃でモウリーニョは、最後にマルアン・フェライニを投入してのパワープレーという、堅守重視の入り方をした試合と同じ采配を選択した。
翌朝の国内紙には、チームを攻撃的に戦えなくした原因として、過去数試合でのモウリーニョの采配を改めて責める論調もあった。
たしかにルカクは、リバプール戦から7試合連続でノーゴールとなったが、見事なヘディングでチェルシーに決勝点をもたらしたアルバロ・モラタも、実は6試合ぶりのゴール。どちらが先制してもおかしくなかった時間帯に、ルカクの動き自体は上々で、エリア外からのシュートを枠内に飛ばしてもいた。
主砲の状態は上向いてきており、ポグバら数名の主力の復帰は11月後半と見込まれている。「ちょうどリーグが過密日程となる頃に、最高潮の調子を取り戻せれば」という、試合後のモウリーニョの発言にも一理ある。
但し、「引き分けが妥当だった」との言い分には頷けない。マンチェスター・Uが、フェライニの十八番でもある胸トラップからのボレーで同点に迫ったことをポルトガル人指揮官が引き合いに出していたのだとすれば、チェルシーには、点差を広げるチャンスがアザール、モラタ、バカヨコらに幾度となくあった。
「叩きに行く相手」というよりも、「叩きに行く時期」を誤ったモウリーニョ。敗戦後の収穫は、次節から再び守備重視の慎重策を採用しても、しばらくは口うるさいメディアと一部のファンが、「仕方ない」と見てくれそうなことだろうか。
文:山中忍
【著者プロフィール】
やまなか・しのぶ/1966年生まれ、青山学院大学卒。94年渡欧。イングランドのサッカー文化に魅せられ、ライター&通訳・翻訳家として、プレミアリーグとイングランド代表から下部リーグとユースまで、本場のサッカーシーンを追う。西ロンドン在住で、ファンでもあるチェルシーの事情に明るい。