「大事にすべきパスサッカーという武器」
第二次世界大戦前から、日本のサッカー界はそうした考えのもとに、パスサッカーを志向してきた(当時想定されていた目標は、アジアの強豪だった中国=香港や日本の統治下にあった朝鮮のチームだった)。そして、戦後も韓国に勝つために、さらに世界と伍して戦うために、日本はパスサッカーに磨きをかけてきたのだ。テクニックと敏捷性を武器とする日本の選手は、戦術にも忠実なプレーができる。そんな特長を活かしたサッカーでもあった。
このようなスタイルを、元日本代表監督の岡田武史は「接近・展開・連続」、同じくイビチャ・オシムは「日本サッカーの日本化」という言葉を使って表現した。
だが、パスサッカーを突き詰めて、ある程度の自信を持って挑んだブラジル・ワールドカップで惨敗を喫したことで、その方向性に対する疑問が生じた。そこで、「速い攻めも使えるように」との意向でハビエル・アギーレが招聘され、アギーレの退任を受けてハリルホジッチが日本代表監督に就任したのだ。
ハリルホジッチ監督は、高い位置でボールを奪って速く攻めるサッカーを志向し、「個の戦い」すなわち「デュエル」を強調。ある意味で、それは「日本サッカーの欧州化」だった。
実際、パスサッカー一辺倒で勝てるはずはない。緩急、長短を使い分ける必要はある。また「個の力」を伸ばすことはどんなサッカーを志向するにしても避けて通れない課題だ。
ただ、日本人選手の特性を考えた時、「パスサッカー」という武器は、やはり大事にしなければいけないのではないか。「パスサッカー」をベースにして、そのうえで速いサッカーもできるようにすること。それこそが、目指すべき道であるはずだ。
ハリルホジッチ流の、つまり「個の戦い」を挑むサッカーで世界を相手に勝つのは難しいだろう。だが、論ずべきは「ロシア大会で勝てるかどうか」ではない。
「日本サッカーは将来、どのような方向に進んでいくべきなのか?」
ハリルホジッチ以後の監督選びを考える際には、ぜひそうした視点から議論を積み重ねてもらいたい。
文:後藤健生(サッカージャーナリスト)
※『サッカーダイジェスト』9月28日号(同9月14日発売)「THE JUDGE」より抜粋
このようなスタイルを、元日本代表監督の岡田武史は「接近・展開・連続」、同じくイビチャ・オシムは「日本サッカーの日本化」という言葉を使って表現した。
だが、パスサッカーを突き詰めて、ある程度の自信を持って挑んだブラジル・ワールドカップで惨敗を喫したことで、その方向性に対する疑問が生じた。そこで、「速い攻めも使えるように」との意向でハビエル・アギーレが招聘され、アギーレの退任を受けてハリルホジッチが日本代表監督に就任したのだ。
ハリルホジッチ監督は、高い位置でボールを奪って速く攻めるサッカーを志向し、「個の戦い」すなわち「デュエル」を強調。ある意味で、それは「日本サッカーの欧州化」だった。
実際、パスサッカー一辺倒で勝てるはずはない。緩急、長短を使い分ける必要はある。また「個の力」を伸ばすことはどんなサッカーを志向するにしても避けて通れない課題だ。
ただ、日本人選手の特性を考えた時、「パスサッカー」という武器は、やはり大事にしなければいけないのではないか。「パスサッカー」をベースにして、そのうえで速いサッカーもできるようにすること。それこそが、目指すべき道であるはずだ。
ハリルホジッチ流の、つまり「個の戦い」を挑むサッカーで世界を相手に勝つのは難しいだろう。だが、論ずべきは「ロシア大会で勝てるかどうか」ではない。
「日本サッカーは将来、どのような方向に進んでいくべきなのか?」
ハリルホジッチ以後の監督選びを考える際には、ぜひそうした視点から議論を積み重ねてもらいたい。
文:後藤健生(サッカージャーナリスト)
※『サッカーダイジェスト』9月28日号(同9月14日発売)「THE JUDGE」より抜粋