【現地発】「問題児D・コスタ」の亡霊を「優等生モラタ」がハットトリックで葬る

カテゴリ:メガクラブ

山中忍

2017年09月25日

「D・コスタなど必要なし!」英国メディアもモラタを絶賛。

D・コスタ(左)との関係性をメディアにとことん追求され、苛立ちも露わにしていたコンテ(右)。そんな指揮官の心の曇りも、吹き飛ばす活躍をモラタは見せている。 (C) REUTERS/AFLO

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 プレミアリーグでのゴール数を6に伸ばした今節のハットトリックは、まさに絶好のタイミングだったと言える。というのも、チェルシーは試合の前々日に、D・コスタの売却でアトレティコ・マドリーと合意に至ったばかりだったからだ。
 
 指揮官に使う意思のない選手を、3200万ポンド(約48億円)だった購入額の2倍近い5800万ポンド(約87億円)で売れる美味しい商談ではあった。しかし、もしストーク戦でモラタが存在感を欠いて勝点を落としていたら、改めて「主砲D・コスタの不在」がサポーターやメディアの間で騒がれたことだろう。
 
 ストーク戦の前日会見でD・コスタに関して、「クラブへの貢献に感謝して、今後の幸運を祈る」と発言するも、そう語る表情が冷めていたコンテにすれば、考えただけでも嫌気が差す状況に陥りかねなかった。
 
 その指揮官が「彼は礼儀正しい」と、D・コスタへの当て擦りとも受け取れる人物評まで口にして讃えたモラタが、難敵ストークから挙げた大勝の立役者となったわけだ。チェルシーにとってこれ以上のシナリオはないだろう。
 
 実際、英国メディアはモラタを絶賛している。国営放送『BBC』の実況解説者は、1ゴール目が決まった瞬間に、「D・コスタなど必要なし!」と叫び、モラタがマン・オブ・ザ・マッチに輝いた一戦を伝えた『メール・オン・サンデー』紙のレポートには、「D・ジエゴは不要」という見出しが飾られた。
 
 コンテ体制2年目を迎えたチェルシーに新たに加わった「優等生」風の新エースは、不穏な空気を一掃するハットトリックを決め、「問題児」だった前エースの亡霊を過去に葬り去ったのだ。
 
文:山中忍
 
【著者プロフィール】
やまなか・しのぶ/1966年生まれ、青山学院大学卒。94年渡欧。イングランドのサッカー文化に魅せられ、ライター&通訳・翻訳家として、プレミアリーグとイングランド代表から下部リーグとユースまで、本場のサッカーシーンを追う。西ロンドン在住で、ファンでもあるチェルシーの事情に明るい。
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