【現地コラム】躓いたヴォルフスブルクが適任の新監督に託す欧州カップ復帰の夢

カテゴリ:連載・コラム

中野吉之伴

2017年09月22日

今こそ必要な全員でのハードワーク

進むべき方向を見失っていたヴォルフスブルクには、シュミット監督のスタイルが最も合うと思われる。懸命なプレーの先に、かつての輝かしき時代が待っているだろうか。 (C) Getty Images

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 この事態を何とかできる適任者は誰だろうか。元アンデルレヒト監督のレネ・バイラーらも候補に挙がっていたが、最終的にクラブがサインを交わしたのは、元マインツのマルティン・シュミットだった。
 
 マインツ時代、残留争いに苦しむチームを様々な手法でひとつにまとめ上げ、ヨーロッパリーグ出場にまで導いたシュミット監督。選手それぞれがチームのために汗をかき、インテンシティーの高いプレーをするという彼の哲学は、今のチームに必要なインパルスとなるはずだ。
 
 マインツでは、チーム総走行距離で125.2キロを記録する試合もあった。とはいえ、長時間の練習や走り込みがあるわけではない。当時、シュミット監督はコンディショニングの秘密について、こう説明していた。
 
「サッカーは、ダッシュが繰り返されるスポーツだ。選手は90分間、マラソン選手のように走り続けなければならない。一方では短距離走者のように最初の10メートルで爆発的なダッシュも見せなければならない。そのあいだでトレーニングをするのがカギだ」
 
「時間とともに、厳密にトレーニングは行なわなければならない。例えば、9分間の練習を行なう時には、1分×9回で行なう時とは全く別の刺激を与える。重要なのは、練習のあいだの休憩。長すぎても短すぎても、効果は得られな」
 
「たったひとつの練習を間違って行なうことで、1週間の練習を全て無駄にすることもある。誤った負荷を与えると、チームは試合で爆発するどころか、疲れて動けない」
 
 自身のサッカーをよく知る、ユヌス・マッリがいるのも大きい。マインツ時代、シュミット監督はマッリのことを、「トランジション10番」と評していたものである。
 
 これは、スルーパスや裏への飛び出し、ライン間でボールを受けるのを得意とする従来のトップ下タイプとは異なり、攻撃への切り替え時のポジショニングが巧みで、スペースを突くドリブルで攻撃にスピードをもたらす選手として重用されていたからだ。
 
 新体制での初戦となった5節のブレーメン戦は1-1の引き分けに終わったが、時折、狙い通りのプレーがあったことは好材料だろう。
 
 課題が解決されるまでに、ある程度の時間がかかるのは仕方がない。中断期の時間をうまく利用して、チームの方向性をまとめ上げることができるか、注目したい。
 
文:中野 吉之伴
 
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。
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