「100億円」を懸けたサバイバル。プレミアの熾烈な生存競争の行方は!?

カテゴリ:ワールド

松澤浩三

2014年04月11日

「残留には奇跡が必要」とポジェ監督。

覇気が感じられないフルアム。「鬼軍曹」マガトをもってしても、降格は不可避か。(C) Getty Images

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 1月22日のオールド・トラフォードでは、サンダーランドのファンが歓喜の雄叫びを上げていた。敵地でマンチェスター・ユナイテッドを撃破し、リーグカップの決勝進出を決めたその瞬間だ。
「We are going to Wembley(ウェンブリー=リーグカップ決勝の舞台=に行くんだ)」のフレーズとともに、「We are staying up, We say we are staying up!(残留するんだ!)」というチャントがこだました。最悪のスタートを切りながら、10月の政権交代でグスタボ・ポジェを新監督に迎え、この時のサンダーランドは上昇気流に乗っていた。サポーターも降格回避に手応えを感じ、この大合唱となったわけだ。

 しかし、その後は勢いが衰え、順位もずるずると降下。3月31日のウェストハム戦に敗れ、続くトッテナム戦で1‐5の惨敗を喫すると、ついに最下位に転落した。残留を争うライバルよりも消化試合が最大で2つ少ないとはいえ、31試合を終えて勝点は25。残り7試合のうち、4試合がマンチェスター・シティやチェルシーなど強豪との対戦で、それ以外の3試合をすべてモノにして3勝4敗でシーズンを終えても、残留のマジックナンバーと言われる「勝点38」に届かない。トッテナム戦後、「奇跡が必要」とポジェ監督が話したとおり、サンダーランドは追い詰められた。

 そのサンダーランドをかわし、10節ぶりに最下位から脱したのがフルアムだ。

 11節終了後から降格圏内にどっぷりと浸かり、24節からは最下位が定位置だった。4月5日のアストン・ビラ戦に勝利して18位に浮上したが、降格圏から抜け出せたわけではなく、危機的状況にあることに変わりはない。サンダーランドよりも2試合多く消化しながら、勝点差は2だ。

 今シーズンは監督の首を二度挿げ替え、2月に「鬼軍曹」ことフェリックス・マガトを招聘するカンフル剤を打ったものの、その効果もいまひとつ。守備のプレスが緩慢で、相手にスペースを与えては簡単に失点。攻撃は目的意識がまるで感じられず、個々が好き勝手にプレーするばかりだ。そもそも選手に覇気がなく、勝とうという意欲があるのかさえ疑わしい。

 マレーシアの富豪で、いわゆるワンマンオーナーのヴィンセント・タンの無軌道ぶりが絶望的な19位のカーディフは、昨年12月に首を切ったマルキー・マッケイの解任が混乱の始まり。かつてマンチェスター・ユナイテッドで一世を風靡したオレ・グンナー・スールシャールを後任に据えたものの、41歳の青年監督の舵取りは不安定で、1年でのチャンピオンシップ逆戻りが目前に迫る。

 勝点32で残留ラインの17位だが、18位フルアムとは勝点5差のノーリッジ、消化試合がひとつ少ないながらノーリッジと同勝点で16位のWBA、勝点33で15位のスウォンジーも、決してうかうかできない。

 佳境を迎えたプレミアは、リバプール、チェルシー、マンチェスター・シティによる三つ巴の優勝争いがヒートアップしている。その一方で、「100億円」を懸けたサバイバルが熾烈に展開中だ。

文:松澤浩三
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