【ドイツ現地コラム】不屈の男バドシュトゥバーが古巣シュツットガルトで思い描く夢

カテゴリ:連載・コラム

中野吉之伴

2017年09月01日

勝者のメンタリティーを魂に刻み込まれた牽引者

バドシュトゥバーの存在は、若く経験の少ない選手が多いがチームにとって貴重な財産でもある。今シーズン、初めてブンデスリーガのピッチに立った浅野拓磨も、この闘将から多くのことを学ぶことだろう。 (C) Getty Images

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 感動のカムバック――。
 
 だが彼にとって、ここがゴールではない。苦しい時間を乗り切るためには、その先に希望に満ちた将来があることが何よりも大切だ。だからバドシュトゥバーは、様々なオファーがあるなかから、シュツットガルトに賭けた。
 
「誰も自分の根っこを忘れたりはしないだろう。僕もそうだ。シュツットガルトは僕にとって特別な場所で、今でもそうなんだ」
 
 バイエルンで未来が見えなくなり、レンタル先のシャルケで居場所を見つけられなかった彼にとって、ユース時代に在籍していた古巣への思いと、今後、数年かけてブンデスリーガのトップ6を目指すというクラブとしてのビジョンが決定打となった。
 
 常勝バイエルンで「勝者のメンタリティー」を魂に刻み込まれたバドシュトゥバーは、決してひとつの勝利に酔いしれたりはしない。劇的な出来事の後でも、視線はすぐに先へと向けられている。
 
「1部リーグは違う。これまでと全く異なるハードさとインテンシティーのなかで戦わなければならないんだ。まだ慣れていない選手は、ナーバスになってしまう。そうすると、適切な判断ができなくなる。だからこそ、僕ら経験のある選手が大切なんだ」
 
「彼らを導き、プレッシャーを軽減し、考えすぎずにプレーさせてあげることが僕らの責任だ。僕もまだ100パーセントではない。リーグ中断期に、さらに自分と向き合って練習するよ。自分のタイミング、自分の精密さ、自分のアグレッシブさを取り戻すために」
 
 バドシュトゥバーは、ただの新加入選手ではない。若手選手が多く、ブンデスリーガ出場歴のほとんどない選手ばかりで構成されるチームでは、彼の培ってきた経験は、計り知れないほど大きな意味を持つはずだ。
 
文:中野 吉之伴
 
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。
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