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好調・名波ジュビロの「パチンコ玉カウンター」。アッズーリの香り漂うメカニズムを解き明かす

カテゴリ:Jリーグ

清水英斗

2017年08月19日

「良い攻撃は、良い守備から始まる」

J1リーグ19節・川崎戦(○5-2)の布陣。ボランチの川辺が、長距離を駆け上がり2ゴールを決めた。

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 ただし、最終ラインは常に高く保てるわけではない。相手に横パスで揺さぶられると、DFの前方へのアタックと横へのスライドが間に合わなくなるからだ。その場合は割り切ってアダイウトンも引かせて、5-4-1として重心を下げる。状況に応じてフレキシブルに形を変える柔軟性が、今の磐田にはある。
 
 そして、もうひとつ磐田で際立つのは、ゾーンディフェンスの出来だ。5バックは選手間の距離がコンパクトに保たれ、中央に絞ることで相手のスルーパスを遮断する。
 
 15節・浦和レッズ戦の時点ではまだ綻びがあり、阿部勇樹にワンツーからDFの間を突破され、ゴールを許している。名波浩監督は記者会見で「5人の横の距離感が、特に我々の左サイド、森下と宮崎のところで通常より幅を取ってしまった。あと3メートル内側に、という意識を持たせたい」と語っていたが、この言葉からも磐田がゾーンの距離感にかなり気を配っていることが分かる。
 
 縦パスを縦パスで打ち返す〝パチンコ玉カウンター〞にも、ゾーンで守るメリットが生きている。ゾーンでは味方との距離感、位置関係を意識しながら守るので、ボールを奪った瞬間にパスの出しどころを見つけやすい。逆にマンツーマンの場合、敵を見ながら守備をするため、どうしても奪ってから味方を探しがちだ。また、磐田では5バックが隙間を埋めるように中央に絞っているので、ムサエフや川辺が最終ラインまで下がる必要性が低く、カウンターに出て行くポジションを取りやすくなる。「良い攻撃は、良い守備から始まる」というわけだ。
 
 現役時代の名波浩は、「僕に足りないものがイタリアにあると思う。それを探しに行ってきます」と言い、守備戦術の国へ渡った。足りないものを見つけ、磨いた結果、それはいつしか武器になった。
 
文:清水英斗(サッカーライター)

※『サッカーダイジェスト』2017年8月24日号(同8月10日発売)「サムライ・タクティクス」より抜粋。
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