【識者コラム】東京五輪後の新国立「球技専用化」は賛成だが、そもそもの疑問は…

カテゴリ:特集

後藤健生

2017年08月17日

設計前から「後利用」について議論してこなかったことが問題。

2020年に東京五輪を控える新国立競技場だが、抱える多くの問題を払拭することは出来るのだろうか。(C)Getty Images

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 多目的競技場はトラックがあるから、フットボールの試合は観づらい。一方、芝生保護のために投てき種目での使用が制限されるなど陸上競技にも使いづらい。それで、多目的競技場は陸上にもフットボールにも使われなくなってしまうのだ。
 
 実際、88年ソウル五輪や08年北京五輪のメインスタジアムは、どちらも多目的競技場のまま残されたため、十分に活用されていない。
 
 建設中の新国立競技場は6万8000人収容だが、日本では陸上競技に2万人以上の観客が集まることはほとんどない。巨大で使用料も高い新国立は、陸上競技にはあまり使えないだろう。もちろん世界陸上でも開催すれば話は別だが、サブトラックがないので招致は難しい。
 
 都心の一等地のスタジアムが活用されないのはもったいない。だから「五輪・パラリンピック後に球技専用に改装」というのは、結論としては「是」と言わざるを得ないのだ。
 
 だが、そんなことは最初から分かっていたはず。なぜ設計前にそういう議論がされなかったのだろうか?
 
 観戦しやすい球技専用競技場とするには、単にトラックを撤去するだけでは不十分だ。フットボール観戦に最適なスタジアムを造るなら、スタンドの傾斜やピッチとの距離を考慮して設計しておく必要があった。
 
 いや、設計前から「後利用」を議論していれば、他にもさまざまな選択肢があったはずだ。スタンドの大半を仮設にして、大会後に縮小。空いたスペースにサブトラックを作れば陸上競技場にすることもできたし、あらかじめ改装を想定して設計しておけば、5万人程度収容の野球場にすることだってできただろう。
 
 新国立競技場の建設については、あのザハ・ハディド案が採用された件(高騰する建設費に批判が集中し、のちに白紙撤回)に始まり、これまで間違いだらけだったが、今後は巨額な建設費が無駄にならないよう、知恵を出し合って「後利用」を真剣に考えていくしかない。報道によると、代々木公園内に新スタジアムを建設する計画もあるようだが、既存のスタジアムを含めた「棲み分け」についても、十分議論すべきだろう。

※『サッカーダイジェスト』8月24日号(8月10日発売)「THE JUDGE」より抜粋
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