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【小宮良之の日本サッカー兵法書】時代遅れの戦術を「最先端」へ――セビージャの挑戦に要注目!

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2017年07月19日

ゾーンの思考も備えた進化系の「時代遅れ戦術」

選手時代はアルゼンチン代表にも選出されたCB。引退後、ビエルサに薫陶を受け、高度な攻撃サッカーを突きつめている。ベリッソは、世界でも注目される監督のひとりである。写真は昨シーズンのEL準決勝マンチェスター・U戦。 (C) Getty Images

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 勇敢さ――。それも、ベリッソのチームを読み解く鍵になる言葉だろう。恐れず、前にボールを運ぶ。失ったら、一人一殺で取り戻し、攻撃に転じる。マンツーマンは守備戦術でありながら、攻撃するために、できる限り早くボールを奪い返す手立てなのである。
 
 言い換えれば、ポゼッション能力にこそ、その真髄はある。さらに言えば、ボールを失わずに回すだけでなく、敵マークを剥がせるか、という個人能力も欠かせない。ベリッソのマンツーマン戦術の眼目は、1対1で攻守両面において勝利し、それをチーム全体の勝利に繋げるところにあるのだ。
 
 この戦術を運用するには、知性も必要になる。マンツーマンは体力をつけるだけでは遂行できない。
 
 敵チームは、マンツーマンを剥がすためにポジションを入れ替え、スイッチするなど混乱を仕掛けてくる。その時、マークする相手をどこまで追うか判断したり、必要に応じてマークを入れ替えたりするには、戦術的理解が必要になる。
 
 つまりマンツーマンには、ゾーンの思考(スペースの把握)も不可欠なのだ。
 
 この論理は、アルゼンチンの名将マルセロ・ビエルサが編み出したものであり、ベリッソは最も影響を受けているひとりと言えるだろう。セビージャの前任監督であるホルヘ・サンパオリも「ビエルサ・チルドレン」のひとりだが、選手とコーチとしてビエルサに師事した経験を持つベリッソのほうが、師匠の色を濃厚に受け継いでいる。
 
 ベリッソはセルタで、ヨーロッパリーグ(EL)で準決勝まで勝ち進むなど、目を見張る試合もやってのけた。ただ、理論の完成には至らなかった。しかし、戦力が充実したセビージャでは、その理想に近づけるはずだ。
 
 大阪での一戦が試金石になるか。時代遅れの戦術革新が、新たな旋風を起こすことになるかも知れない。
 
文:小宮 良之
 
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『おれは最後に笑う』(東邦出版)など多数の書籍を出版しており、今年3月にはヘスス・スアレス氏との共著『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』(東邦出版)を上梓した。
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