我々レフェリーは「ああそうだった」程度の存在でいい。
岩政 参考にされたレフェリーはいますか?
西村 特にはいませんが、色々なレフェリングのスタイルを参考にしました。
例えば、有名な方を挙げれば、イタリアのピエルルイジ・コッリーナさん。厳格な姿勢とスキンヘッドの風貌で「今日はファウルできない」という印象を選手に与える。だから試合が締まります。南米系のレフェリーであれば、選手の肩を叩きながら上手くゲームを収めるタイプがいます。
ただ、私が誰かの真似をしても、本人にはなれません。西村雄一としてのレフェリングでどれだけ選手に信頼され、プレーに集中してもらえるかが、私がやるべきことです。
岩政 それが西村さんのスタイルなんですね。
西村 岩政さんは、試合の後半になってきたらレフェリー云々じゃなくなってきませんか?
岩政 そうですね。良いレフェリーだったら、ですが(笑)。
西村 昨年の、岡山で出場された昇格プレーオフの時は、私の存在を気にしていなかったように感じました。前半で私とコミュニケーションを取り切って、後半はチームへの指示だけに集中していた印象です。
岩政 確かに、プレーオフの西村さんの記憶がないですね。今言われるまで、西村さんが笛を吹いていたのを忘れていました。
西村 本当ですか。であれば、理想に近い仕事ができたのかなと思います。我々レフェリーは、皆さんが振り返った時に「ああそうだった」程度の存在でいいんです。
岩政 そのなかで、充実感はどうやって得るんですか? 良いレフェリングをすると、忘れ去られてしまうわけですよね。
西村 それでいいんです。自分が一緒に試合をした選手が成長して海外移籍したり、日本代表として戦っている姿を見ると充実感を覚えます。これは、レフェリーとして得られる醍醐味だと思います。私もサッカーが好きで、審判という立場から支えたいと思っているので、日本サッカーが良い方向に進むと嬉しいんです。
去年のクラブワールドカップでの鹿島の準優勝に感動しました。Jリーグで一緒に試合をしている選手が世界で活躍し、その選手たちとまた一緒にピッチに立てる。審判冥利に尽きますね。
<<#4に続く>>
【プロフィール】
西村雄一(にしむら・ゆういち)/1972年4月17日、東京都出身。1999年に一級審判員として登録され、2004年からスペシャルレフェリー(現・プロフェッショナルレフェリー)に。2010年の南アフリカ・ワールドカップ決勝の第4審判、2014年のブラジル・ワールドカップでは、開幕戦で主審を務めた。2014年まで国際審判員として活躍し、現在はJリーグで笛を吹いている。
岩政大樹(いわまさ・だいき)/1982年1月30日、山口県出身。J1通算290試合・35得点。J2通算82試合・10得点。日本代表8試合・0得点/鹿島で不動のCBとして活躍し、2007年からJ1リーグ3連覇を達成。日本代表にも選出され、2010年の南アフリカW杯メンバーに選出された。2014年にはタイのBECテロ・サーサナに新天地を求め、翌2015年にはJ2岡山入り。岡山では2016年のプレーオフ決勝に導いた。今季から在籍する東京ユナイテッドFCでは、選手兼コーチを務める。
西村 特にはいませんが、色々なレフェリングのスタイルを参考にしました。
例えば、有名な方を挙げれば、イタリアのピエルルイジ・コッリーナさん。厳格な姿勢とスキンヘッドの風貌で「今日はファウルできない」という印象を選手に与える。だから試合が締まります。南米系のレフェリーであれば、選手の肩を叩きながら上手くゲームを収めるタイプがいます。
ただ、私が誰かの真似をしても、本人にはなれません。西村雄一としてのレフェリングでどれだけ選手に信頼され、プレーに集中してもらえるかが、私がやるべきことです。
岩政 それが西村さんのスタイルなんですね。
西村 岩政さんは、試合の後半になってきたらレフェリー云々じゃなくなってきませんか?
岩政 そうですね。良いレフェリーだったら、ですが(笑)。
西村 昨年の、岡山で出場された昇格プレーオフの時は、私の存在を気にしていなかったように感じました。前半で私とコミュニケーションを取り切って、後半はチームへの指示だけに集中していた印象です。
岩政 確かに、プレーオフの西村さんの記憶がないですね。今言われるまで、西村さんが笛を吹いていたのを忘れていました。
西村 本当ですか。であれば、理想に近い仕事ができたのかなと思います。我々レフェリーは、皆さんが振り返った時に「ああそうだった」程度の存在でいいんです。
岩政 そのなかで、充実感はどうやって得るんですか? 良いレフェリングをすると、忘れ去られてしまうわけですよね。
西村 それでいいんです。自分が一緒に試合をした選手が成長して海外移籍したり、日本代表として戦っている姿を見ると充実感を覚えます。これは、レフェリーとして得られる醍醐味だと思います。私もサッカーが好きで、審判という立場から支えたいと思っているので、日本サッカーが良い方向に進むと嬉しいんです。
去年のクラブワールドカップでの鹿島の準優勝に感動しました。Jリーグで一緒に試合をしている選手が世界で活躍し、その選手たちとまた一緒にピッチに立てる。審判冥利に尽きますね。
<<#4に続く>>
【プロフィール】
西村雄一(にしむら・ゆういち)/1972年4月17日、東京都出身。1999年に一級審判員として登録され、2004年からスペシャルレフェリー(現・プロフェッショナルレフェリー)に。2010年の南アフリカ・ワールドカップ決勝の第4審判、2014年のブラジル・ワールドカップでは、開幕戦で主審を務めた。2014年まで国際審判員として活躍し、現在はJリーグで笛を吹いている。
岩政大樹(いわまさ・だいき)/1982年1月30日、山口県出身。J1通算290試合・35得点。J2通算82試合・10得点。日本代表8試合・0得点/鹿島で不動のCBとして活躍し、2007年からJ1リーグ3連覇を達成。日本代表にも選出され、2010年の南アフリカW杯メンバーに選出された。2014年にはタイのBECテロ・サーサナに新天地を求め、翌2015年にはJ2岡山入り。岡山では2016年のプレーオフ決勝に導いた。今季から在籍する東京ユナイテッドFCでは、選手兼コーチを務める。