無名の若きサムライが、遠いボスニアの地で古豪とプロ契約!

カテゴリ:海外日本人

森本高史

2017年06月24日

「助っ人としてプレーするのは容易ではない」。

新シーズンの開幕に向けて、急ピッチで調整を続けている鈴木梨生(左)。覚えておいてほしい名だ。

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年明けにはクロアチアの名門、ディナモ・ザグレブの練習に参加。高評価を得たものの、またしても契約には至らず……。

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 年が明けて1月、ボスニアに渡る。

 2年連続でプレミアリーグを制している王者ズリンスキ・モスタルの入団テストに臨み、ここでもハイレベルなテクニックを披露。若き日のルカ・モドリッチが武者修行したことでも有名な強豪からも、オファーは届いた。しかしそれはアマチュア契約。慢性的な経営難に苦しむズリンスキは資金を捻出できなかったのだ。あくまでプロ契約にこだわる鈴木は別のクラブを探した。
 
 今度は、そのモドリッチが声価を高めたクロアチアの名門、ディナモ・ザグレブから誘いを受けた。トップチームがトルコ遠征の最中、ザグレブに残るセカンドチームの練習に参加したのだ。3つの練習試合に出場し、1ゴール・1アシストとしっかりアピール。1990年代後期にガンバ大阪を指揮したヨシップ・クゼ氏を父に持つチームマネジャー、マルコ・クゼ氏は、「躍動感に溢れていた、若き日の稲本潤一を見ているようだ」と語った。
 
 現場サイドは鈴木の獲得を希望したというが、主力選手の売却が上手くいかず、同じく財政難に喘ぐフロントが首を縦に振らなかった。「タイミングが良くない。残念だけどいまは契約できないよ」と言われ、物別れに終わった。
 
「下を向いている時間はない。必ずチャンスはやってくる。準備をして待つのみです」
 
 毎回ピッチ外の問題に直面し、チームが決まらない鈴木。2月に入り、ヨーロッパの多くの国で移籍期間がクローズするなか、次なるチャンスが巡ってきた。なんとボスニアのFKボラツが正式オファーをくれたのだ。急転直下の展開で、とんとん拍子に入団が決まった。
 
 ヴィツォ・ゼリコビッチCEOは獲得の意図をこう説明してくれた。
 
「シーズン中の登録には間に合わなかったが、そんなことは関係ない。目の前の試合よりも、リオの将来性に期待している。近い将来、ヨーロッパのビッグクラブに移籍し、日本代表にも選ばれるだろう。それくらいのポテンシャルを持っている。チャンピオンズ・リーグ出場を目ざす我々にとって最高の補強だ」
 
 鈴木は3か月間、ボラツで連日トレーニングに励み、準備は万端。ヨーロッパでピッチ外の問題で苦しんだ経験は決して無駄にはならないだろう。
 
「なかなかチームが見つからない時間が長く、正直、辛い時期もありました。でも、外国で助っ人としてプレーするのは容易ではないのだと、肌で実感しましたし、有意義な時間だったと捉えてます。ハリルホジッチさんの母国のトップリーグでプレーできることをとても嬉しく思いますし、ゼコやイビチェビッチのようにボスニアで活躍して、ヨーロッパのビッグリーグへとステップアップできるように全力を尽くします」
 
 先のワールドカップ・アジア最終予選には、ブルガリア・リーグで名を揚げた加藤恒平が日本代表にサプライズ招集され、話題をさらった。来シーズンからボスニアのトップリーグに挑戦する鈴木には今後、3年後の東京五輪を目ざすU-20日本代表への招集が期待される。
 
「いままで自分を指導してくれたすべての監督、コーチに感謝の気持ちで一杯です」
 
 18歳で海を渡った若きサムライ、鈴木梨生。そのフレッシュな挑戦を、これからも追っていきたい。
 
文:森本高史
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