焦燥が透けて見えるハリルの試行錯誤ぶり。最大の懸念は理想のボランチ探しか

カテゴリ:日本代表

加部 究

2017年06月14日

適任を見出せない懸念のポジションで選択肢は広がったが……。

イラク戦でワールドカップ予選初スタメンを飾った井手口。持ち前のアグレッシブな守備を見せた。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

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 もちろん選択肢の幅に視点を絞れば、収穫は少なくない。シリア戦途中で緊急出動となった井手口は、躊躇ないチャレンジや広範な動きを見せ、左右のサイドにもサポートに出て攻撃面でも起点となった。試合後の会見では代表復帰の乾貴士についての質問が続いたわけだが、指揮官自らが敢えて「井手口も良かった」とつけ加えたほどで、そのままチャンスを活かしてイラク戦の抜擢につながった。
 
 今回の加藤のサプライズ抜擢からも窺えるように、どうやら現状でハリルホジッチ監督が最も苦慮しているのは、闘えて攻守のバランスに長けた理想のボランチ探しである。

 最終予選初戦(対UAE=ホーム)では、唐突に大島僚太を抜擢して痛い目に遭い、山口蛍をアンカーに据えた形も模索したが、完全に納得の様子ではない。オランダでレギュラーに定着している小林祐希を横目に、ブルガリアから加藤を呼んだのも、小林の適性がこのポジションではないと見ている証左なのだろう。適任を見出せない懸念のポジションで選択肢が広がり、しかも井手口、遠藤と若い世代が加わって来たことは朗報だ。だが予選を抜け出して世界への道が開けた時点で、当然ハリルホジッチ監督のチーム作りの基準も少なからず変化してくるはずである。
 
 今、指揮官の試行錯誤ぶりからは、焦燥が透けて見える。新陳代謝の必要性は感じるが、一方で予選突破という最優先の命題に確実な見通しが立たない。たまたまイラク戦では窮状に直面し、新戦力が巡って来たチャンスを活かしたし、また代表とはそうやって活気づいていくものなのかもしれない。しかし反面、手にした収穫の裏に、名将ならではの深謀遠慮や確かな設計図があるようには見えない。
 
文:加部 究(スポーツライター)
 
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