【現地発】柴崎岳のスペイン語対応と笑顔に「成長」と「幸福」を見た

カテゴリ:海外日本人

工藤拓

2017年05月31日

試合後には誕生日ケーキが振る舞われて挨拶も。

まだ片言のスペイン語の柴崎だが、チームメイトとも徐々に馴染んでいる。写真:佐藤香織

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 ラテン諸国の人々ほど感情表現が豊かではないこともあり、ここスペインでは我々日本人はただ黙っているだけで、「あいつは何を考えているか分からない」と眉をひそめられることが少なからずある。
 
「はたしてGAKUはこのチームを、クラブのことをどう考えているのか」
 
「テネリフェでの生活を楽しめているのか」
 
「1部に昇格すれば残ると聞いてはいるが、本当は早く日本に帰りたいと思っているのではないか」
 
 寡黙な日本人MFに対して、テネリフェの人々がそのような疑問を抱いているとしても不思議ではない。試合を重ねるごとに存在感を増している柴崎が、必要とされていることの裏返しでもある。
 
 アルコルコン戦の84分、交代でピッチを去る際にはゴール裏のテネリフェ・ファンから誕生日を祝う歌が送られた。試合後のチームでの食事では誕生日ケーキが振る舞われ、柴崎が恥ずかしそうにローソクの火を吹き消すと、会場は拍手で包まれた。
 
 その後に挨拶を求められた柴崎は、スタッフやチームメートの視線を一身に受けながらこう呟いた。
 
「えーっと、Vamos a Primera(1部に行こう)」
 
 加入当初の困難を経て、柴崎は新たな環境に正面から向き合い、ピッチ内外でクラブの一員となるべく努めている。そしてテネリフェの人々は、そんな彼に惜しみなく愛情を注いでいる。
 
 全42節の長丁場もあと2試合。現在4位のテネリフェは自動昇格の可能性が潰えた一方、あと1勝で昇格プレーオフ進出が確定する。
 
 テネリフェがどのような形で今シーズンを終えるのか、そして半年契約の柴崎が来シーズンどこでプレーするのかは、まだ分からない。でももしかしたら、たとえ1部昇格が叶わなくとも、この関係が続く可能性はあるのではないか。
 
 笑顔に包まれた光景を見て、そんな考えが頭をよぎった。
 
文:工藤拓
 
【柴崎岳PHOTO】テネリフェでのプレー&オフショットを厳選!
 
【著者プロフィール】
1980年、東京都生まれ。桐光学園高、早稲田大学文学部卒。三浦知良に憧れて幼稚園からボールを蹴りはじめ、TVで欧州サッカー観戦三昧の日々を送った大学時代からフットボールライターを志す。その後EURO2004、W杯ドイツ大会の現地観戦を経て、2006年よりバルセロナへ移住。現在は様々な媒体に執筆している。
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