【広島】「来るな、来るな」から「来い、来い」へ。自分を取り戻した塩谷司の心境の変化

カテゴリ:Jリーグ

原田大輔

2017年05月22日

高い位置でボールを受け、同点弾につながるパスを供給。

責任感の強さゆえ、勝てない時期は思いが空回りし、自分のプレーを出せず苦しんでいた。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 その日の練習を終えた直後だった。森﨑から「サッカーを楽しんでいないのでは」と指摘されたのは。それを言われ、森﨑にも思いをぶつけた。
 
「カズさんと監督、ふたりには感謝しています。思いをぶつけたことで、すっきりしたんですよね。カズさんとは、プレーのこともそうだし、メンタルのこともそうだし、チームとしてこういう方向で戦っていくべきだという話もした。ふたりと話したことは、自分の中ですごいデカかったですね」
 
 ベテランである森﨑の働きかけで、チーム全体が戦い方を模索して甲府戦に臨んだが、塩谷はこう言い表わした。
 
「チームというよりも、自分自身を見つめ直した1週間だったのかなって。監督とも話をして、良い意味で開き直れたというか。先のことは考えずに、次の1試合(甲府戦)に集中して取り組もうって思えた。だから今日、先に1点を取られた時も、全然、苦しくなかったんですよ」
 
 19分に甲府に先制され、迎えた41分だった。右サイドの高い位置でボールを受けた塩谷は、そのまま持ち上がると1トップの皆川佑介にくさびの縦パスを入れた。これを皆川が反転してアンデルソン・ロペスにつなぐと、最後は柴﨑晃誠が決めて同点に追いついた。
 
「頭が整理された状態で臨んでいなかったら、まずあの位置に自分はいなかったと思う。失点して守備、守備ってなって、低いポジションを取っていたかもしれない」
 
 あのプレーが、あの同点弾がなければ、逆転勝利も、6試合ぶりとなる勝利もなかった。
 
「結局、自分のプレーに集中していれば、それが自ずとチームを引っ張ることになるというのを思い出しました。本当に、監督とカズさんと話して、自分を取り戻せたなって」
 
 だから最後に、塩谷に聞いた。その質問は記さずとも、恐らく分かるだろう。
 
「今日は俺、90分間楽しみましたよ。絶対に楽しむことだけは忘れずにピッチに立ってましたからね。今日は、俺のところにボール来い、来いって思ってました。そういう時に限って来ないんですけどね。不思議なもので(笑)」
 
 森﨑に聞けば、「シオは1週間でよく、ここまで本来のプレーを取り戻したなって思いますよ」と絶賛する。先ほどまで話していた塩谷が、その横を通り過ぎていく。
 
「(試合当日の朝の)散歩、誘いますね」
 
 後輩がそう言うと、先輩はこう返した。
 
「それもそうだけど、メシなメシ!」
 
 試合後、指揮官も話したように、甲府戦に勝利したとはいえ、今季2勝目を挙げたに過ぎない。いまだ降格圏の16位と、厳しい状況に立たされている。
 
 ただ、ふたりのやりとりを聞いて、チームの結束はより強固に、目指す方向性はより明確になったと感じた。自分を取り戻すことこそが、すなわち自分たちを取り戻すことでもあるのだと。
 
取材・文:原田大輔(SCエディトリアル)
 
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