高い位置でボールを受け、同点弾につながるパスを供給。
その日の練習を終えた直後だった。森﨑から「サッカーを楽しんでいないのでは」と指摘されたのは。それを言われ、森﨑にも思いをぶつけた。
「カズさんと監督、ふたりには感謝しています。思いをぶつけたことで、すっきりしたんですよね。カズさんとは、プレーのこともそうだし、メンタルのこともそうだし、チームとしてこういう方向で戦っていくべきだという話もした。ふたりと話したことは、自分の中ですごいデカかったですね」
ベテランである森﨑の働きかけで、チーム全体が戦い方を模索して甲府戦に臨んだが、塩谷はこう言い表わした。
「チームというよりも、自分自身を見つめ直した1週間だったのかなって。監督とも話をして、良い意味で開き直れたというか。先のことは考えずに、次の1試合(甲府戦)に集中して取り組もうって思えた。だから今日、先に1点を取られた時も、全然、苦しくなかったんですよ」
19分に甲府に先制され、迎えた41分だった。右サイドの高い位置でボールを受けた塩谷は、そのまま持ち上がると1トップの皆川佑介にくさびの縦パスを入れた。これを皆川が反転してアンデルソン・ロペスにつなぐと、最後は柴﨑晃誠が決めて同点に追いついた。
「頭が整理された状態で臨んでいなかったら、まずあの位置に自分はいなかったと思う。失点して守備、守備ってなって、低いポジションを取っていたかもしれない」
あのプレーが、あの同点弾がなければ、逆転勝利も、6試合ぶりとなる勝利もなかった。
「結局、自分のプレーに集中していれば、それが自ずとチームを引っ張ることになるというのを思い出しました。本当に、監督とカズさんと話して、自分を取り戻せたなって」
だから最後に、塩谷に聞いた。その質問は記さずとも、恐らく分かるだろう。
「今日は俺、90分間楽しみましたよ。絶対に楽しむことだけは忘れずにピッチに立ってましたからね。今日は、俺のところにボール来い、来いって思ってました。そういう時に限って来ないんですけどね。不思議なもので(笑)」
森﨑に聞けば、「シオは1週間でよく、ここまで本来のプレーを取り戻したなって思いますよ」と絶賛する。先ほどまで話していた塩谷が、その横を通り過ぎていく。
「(試合当日の朝の)散歩、誘いますね」
後輩がそう言うと、先輩はこう返した。
「それもそうだけど、メシなメシ!」
試合後、指揮官も話したように、甲府戦に勝利したとはいえ、今季2勝目を挙げたに過ぎない。いまだ降格圏の16位と、厳しい状況に立たされている。
ただ、ふたりのやりとりを聞いて、チームの結束はより強固に、目指す方向性はより明確になったと感じた。自分を取り戻すことこそが、すなわち自分たちを取り戻すことでもあるのだと。
取材・文:原田大輔(SCエディトリアル)
「カズさんと監督、ふたりには感謝しています。思いをぶつけたことで、すっきりしたんですよね。カズさんとは、プレーのこともそうだし、メンタルのこともそうだし、チームとしてこういう方向で戦っていくべきだという話もした。ふたりと話したことは、自分の中ですごいデカかったですね」
ベテランである森﨑の働きかけで、チーム全体が戦い方を模索して甲府戦に臨んだが、塩谷はこう言い表わした。
「チームというよりも、自分自身を見つめ直した1週間だったのかなって。監督とも話をして、良い意味で開き直れたというか。先のことは考えずに、次の1試合(甲府戦)に集中して取り組もうって思えた。だから今日、先に1点を取られた時も、全然、苦しくなかったんですよ」
19分に甲府に先制され、迎えた41分だった。右サイドの高い位置でボールを受けた塩谷は、そのまま持ち上がると1トップの皆川佑介にくさびの縦パスを入れた。これを皆川が反転してアンデルソン・ロペスにつなぐと、最後は柴﨑晃誠が決めて同点に追いついた。
「頭が整理された状態で臨んでいなかったら、まずあの位置に自分はいなかったと思う。失点して守備、守備ってなって、低いポジションを取っていたかもしれない」
あのプレーが、あの同点弾がなければ、逆転勝利も、6試合ぶりとなる勝利もなかった。
「結局、自分のプレーに集中していれば、それが自ずとチームを引っ張ることになるというのを思い出しました。本当に、監督とカズさんと話して、自分を取り戻せたなって」
だから最後に、塩谷に聞いた。その質問は記さずとも、恐らく分かるだろう。
「今日は俺、90分間楽しみましたよ。絶対に楽しむことだけは忘れずにピッチに立ってましたからね。今日は、俺のところにボール来い、来いって思ってました。そういう時に限って来ないんですけどね。不思議なもので(笑)」
森﨑に聞けば、「シオは1週間でよく、ここまで本来のプレーを取り戻したなって思いますよ」と絶賛する。先ほどまで話していた塩谷が、その横を通り過ぎていく。
「(試合当日の朝の)散歩、誘いますね」
後輩がそう言うと、先輩はこう返した。
「それもそうだけど、メシなメシ!」
試合後、指揮官も話したように、甲府戦に勝利したとはいえ、今季2勝目を挙げたに過ぎない。いまだ降格圏の16位と、厳しい状況に立たされている。
ただ、ふたりのやりとりを聞いて、チームの結束はより強固に、目指す方向性はより明確になったと感じた。自分を取り戻すことこそが、すなわち自分たちを取り戻すことでもあるのだと。
取材・文:原田大輔(SCエディトリアル)