ダニ・アウベスはファイナルで驚異的な勝率を誇る。
事実、前半20分に先制しながらその直後に同点に追いつかれ、後半2失点を喫して逆転負けしたローマ戦の後、マッシミリアーノ・アッレグリ監督はこう語っていたものだ。
「前半は悪くなかった。しかし、そこでもう勝ったつもりになったか、そうでなくともスクデットに繋がる引き分けは手に入れたと思ってしまったのだろう。後半が始まってすぐ、テンションが緩んでいることが分かった。自分たちの攻撃がオフサイドで終わった後に気を抜いて、その隙を突かれてゴールを奪われた。唯一ポジティブな側面があるとしたら、この敗北がチームにとって間違いなく教訓となること。自分たちが何を間違えたのかを冷静に振り返れば、二度と同じ過ちを犯すことはないだろうから」
その3日後に行われたコッパ・イタリア決勝の戦いぶりには、その「学習効果」がはっきりと現れていた。
立ち上がりこそラツィオのフィジカルでアグレッシブなハイプレスにたじろぎ、5分には速攻からケイタ・バルデ・ディアオのシュートがポストを叩く場面があったものの、落ち着いてボールを支配し主導権を手元に引き寄せる。
そして12分、アレックス・サンドロのアーリークロスを、ファーサイドにフリーで走り込んだダニエウ・アウベスがボレーシュートで叩き早くも先制。続く17分の決定機はパウロ・ディバラ、ゴンサロ・イグアインのシュートを立て続けに止めたGKトマシュ・ストラコッシャのスーパーセーブに阻まれたものの、24分にはCKからレオナルド・ボヌッチがねじ込んで2-0とした。
残る1時間あまりは、主導権を握るよりもカウンター狙いの方が怖いラツィオにボールをあえて委ね、受けに回って相手の攻撃をいなしながら、しばしばカウンターで反撃しつつも、嫌な形でのボールロストは徹底して避けるしたたかさを見せ、まったくテンションを落とさず冷静沈着に試合をコントロールし切った。
先制ゴールを決めたダニ・アウベスにとっては、これがヨーロッパでプレーを始めてから通算30個目のクラブタイトル。内訳は、CL3、UEFAカップ(現ヨーロッパリーグ)2、クラブワールドカップ3、UEFAスーパーカップ4、リーガ・エスパニョーラ6、コパ・デル・レイ5、スーペルコパ・エスパニョーラ6、そして今回のコッパ・イタリアだ。
【現地発】ダニ・アウベスが「カルチャーショック」を乗り越え、ユーベの「違い」になるまでの舞台裏
ユーベにとって心強いのは、このダニ・アウベスがこれまで、2003年のU-20ワールドカップ(ブラジル代表)を皮切りに今回のコッパ・イタリアまで、代表とクラブで計33回のファイナルを戦い、そのうち28回勝っているというもうひとつの記録。はたしてキャリア34回目となるCL決勝でブラジル代表は、ユーベの過去4連敗という負の歴史をひっくり返すことができるか。
文:片野道郎
【著者プロフィール】
1962年生まれ、宮城県仙台市出身。1995年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中だ。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させている。『ワールドサッカーダイジェスト』誌では現役監督とのコラボレーションによる戦術解説や選手分析が好評を博す。ジョバンニ・ビオ氏との共著『元ACミラン専門コーチのセットプレー最先端理論』が2017年2月に刊行された。
「前半は悪くなかった。しかし、そこでもう勝ったつもりになったか、そうでなくともスクデットに繋がる引き分けは手に入れたと思ってしまったのだろう。後半が始まってすぐ、テンションが緩んでいることが分かった。自分たちの攻撃がオフサイドで終わった後に気を抜いて、その隙を突かれてゴールを奪われた。唯一ポジティブな側面があるとしたら、この敗北がチームにとって間違いなく教訓となること。自分たちが何を間違えたのかを冷静に振り返れば、二度と同じ過ちを犯すことはないだろうから」
その3日後に行われたコッパ・イタリア決勝の戦いぶりには、その「学習効果」がはっきりと現れていた。
立ち上がりこそラツィオのフィジカルでアグレッシブなハイプレスにたじろぎ、5分には速攻からケイタ・バルデ・ディアオのシュートがポストを叩く場面があったものの、落ち着いてボールを支配し主導権を手元に引き寄せる。
そして12分、アレックス・サンドロのアーリークロスを、ファーサイドにフリーで走り込んだダニエウ・アウベスがボレーシュートで叩き早くも先制。続く17分の決定機はパウロ・ディバラ、ゴンサロ・イグアインのシュートを立て続けに止めたGKトマシュ・ストラコッシャのスーパーセーブに阻まれたものの、24分にはCKからレオナルド・ボヌッチがねじ込んで2-0とした。
残る1時間あまりは、主導権を握るよりもカウンター狙いの方が怖いラツィオにボールをあえて委ね、受けに回って相手の攻撃をいなしながら、しばしばカウンターで反撃しつつも、嫌な形でのボールロストは徹底して避けるしたたかさを見せ、まったくテンションを落とさず冷静沈着に試合をコントロールし切った。
先制ゴールを決めたダニ・アウベスにとっては、これがヨーロッパでプレーを始めてから通算30個目のクラブタイトル。内訳は、CL3、UEFAカップ(現ヨーロッパリーグ)2、クラブワールドカップ3、UEFAスーパーカップ4、リーガ・エスパニョーラ6、コパ・デル・レイ5、スーペルコパ・エスパニョーラ6、そして今回のコッパ・イタリアだ。
【現地発】ダニ・アウベスが「カルチャーショック」を乗り越え、ユーベの「違い」になるまでの舞台裏
ユーベにとって心強いのは、このダニ・アウベスがこれまで、2003年のU-20ワールドカップ(ブラジル代表)を皮切りに今回のコッパ・イタリアまで、代表とクラブで計33回のファイナルを戦い、そのうち28回勝っているというもうひとつの記録。はたしてキャリア34回目となるCL決勝でブラジル代表は、ユーベの過去4連敗という負の歴史をひっくり返すことができるか。
文:片野道郎
【著者プロフィール】
1962年生まれ、宮城県仙台市出身。1995年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中だ。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させている。『ワールドサッカーダイジェスト』誌では現役監督とのコラボレーションによる戦術解説や選手分析が好評を博す。ジョバンニ・ビオ氏との共著『元ACミラン専門コーチのセットプレー最先端理論』が2017年2月に刊行された。