【ベガルタ戦記】渡邉晋の『日晋月歩』|特別な日に試合をした意義や想いと向き合って

カテゴリ:連載・コラム

渡邉 晋

2017年03月13日

選手をもっと信じてあげるべきだった。

スタジアムに来てくれたサポーターも、来れなかったサポーターも、様々な想いを抱えながら応援をしていたはずだ。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 メンタル面では、「3月11日の試合で自分たちは何ができるのだろう」から始まり、「この1日だけを勝てばいいのか」「いや、ダメだろう」と思考は行ったり来たり。どうアプローチすればいいのか……。
 
 日程が発表された当初は「当日に神戸と対戦するのか。よし、やってやろう」と奮い立った。しかし、近付くにつれて「試合に勝てば、それだけでいいのか」という気持ちも湧き上がってきた。
 
 一方、チケットの売れ行きが芳しくないとも耳にして複雑な想いもあった。「ユアスタ(ユアテックスタジアム仙台)には行けない」という遺族の方や、多くの場所で行なわれている追悼式典に出席する人だっている。
 
「3月11日に試合をして、何が生み出せるのか」「試合自体をやっていいのか」。そういう感情も出てきてしまった。最初とは真逆の考えが浮かんだ。整理するのに時間が掛かり、勝手に自分の中でいろいろなことを難しくさせてしまったのかなと思う。
 
 そんななかで多くの人と話をして、「自分たちはサッカーでしか表現できない。戦う以上はクラブも選手もサポーターも勝利を目指すわけだから、それを掴み取ろう。魂を込めて戦おう」。そういうシンプルな答に辿り着いた。
 
 だが、それを選手たちにどう落とし込めばいいか。1節・札幌戦と2節・磐田戦は粘り強く、したたかないゲームをできていたから、多くを言わなくてもいいのかもしれない。特別な日の試合に、いろんな人がいろんな想いを寄せてくれ、それを背負いながらも冷静にいられることのほうが大切かなとも考えた。
 
 それでも、試合直前に「いくぞ!」と発破をかけなればいけない。そういう自分の中でのアンバランスさが、選手たちの落ち着きのなさにつながってしまったのもしれない。普段と変わらずに送り出していれば、伸び伸びとプレーできたのかなと思ってしまう。
 
 また、キャンプから“自立”をテーマに掲げているが、選手が判断をしてゲームを作ってくれることが増えた。それをもっと信じてあげるべきだった。成長を感じさせてくれる今の彼らなら、今回の試合も十分に勝つ展開にできたのではないだろうか。
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