常に冷静な長谷部のような存在がチームの浮沈の鍵を握るはず。

08年にヴォルフスブルク(写真)から始まったドイツでの挑戦。長い年月をかけてこのたび、金字塔を打ち立てた長谷部だが、今が旬の33歳はさらなる上を目指し続ける。 (C) Getty Images
フランクフルトのOBで、90年イタリア・ワールドカップの優勝メンバー、そして浦和レッズでもプレーしたことがあるウーベ・バインは、長谷部を前半戦のベストメンバーのひとりに挙げている。
また、フランクフルトの代表取締役を務めるフレディ・ボビッチは以前、「マコトは、我々のパズルのなかで重要なパーツ。本物のリーダーで、賢さのあるプレースタイルと経験が、チームをさらに助けてくれる」と語っていたものである。
昨年12月21日のマインツ戦の前、長谷部の契約延長のアナウンスが場内に流されると、スタンドからは大きな歓声や拍手が起こった。観客のこのリアクションについても、長谷部も喜びを表わした。
「ファンに、そういう風に受け入れてもらえるというか、感じてもらえるのは、選手として非常に嬉しいこと。自分のなかでは、今シーズンもそうだし、先シーズンもそうですけど、ドイツに来てから一番、充実感があります」
「プレーヤーとして、経験とかそういうところで成熟度は増しているかなと。この2年くらいは、キャリアハイなのかなって感覚も正直あります。それを維持するんじゃなくて、これからさらに良くしていきたいと思います。今はやっぱり、サッカーをやっていて楽しいです」
なぜ、長谷部はコンスタントに活躍することができているのだろうか。
その理由は、難しい状況からでも立ち上がってくる姿勢にある。この姿勢こそ、長谷部が持っている最大の武器ではないだろうか。
かつて自身のブログで、尊敬する人生の先輩から贈られた言葉として「随所作主、立処皆真」という言葉を紹介し、「いつどこにいても、どんな立場でも、何者にも囚われず、常に主体性を持って一生懸命行動すれば、もうそこには真実がある」と説明していたことがあった。
勝っても驕らず、負けても腐らず。バイエルンと引き分けても淡々と試合を振り返り、自分のミスで負けても取り乱さない。
監督交代が日常茶飯事のプロサッカーの世界。そんなことも、長谷部にとっては学びの場なのだ。ヴォルフスブルク時代には、「僕は監督交代からいろんなことを学んだから。それに、こうした状況で得た大事な経験は、サッカー以外のところでも役に立つ」と前向きに捉えていた。
可能な限り冷静に現状を分析し、そこから改善策を見出し続けていく。派手さはない。だが、この当たり前のことを当たり前にやり続けていく強さが、彼にはあるのだ。
フランクフルトは、怪我人の影響と他チームから研究されたことで、ここのところ勝利から見放されている。このような状況では、選手たちに焦りが出てくるのも当然だろう。
だからこそ、コバチ監督が「彼が試合をオーガナイズしてくれる。ボールを持っていても慌てない。彼がいることを嬉しく思う。今後も、チームに安定感をもたらしてくれるに違いない」と絶賛する、長谷部のような存在がチームの浮沈の鍵を握るのである。
文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/ドイツ・フライブルク在住の指導者。2009年にドイツ・サッカー連盟公認のA級コーチングライセンス(UEFAのAレベルに相当)を取得。SCフライブルクでの研修を経て、フライブルガーFCでU-16やU-18の監督、FCアウゲンのU-19でヘッドコーチなどを歴任。2016-17シーズンからFCアウゲンのU-15で指揮を執る。1977年7月27日生まれ、秋田県出身。
また、フランクフルトの代表取締役を務めるフレディ・ボビッチは以前、「マコトは、我々のパズルのなかで重要なパーツ。本物のリーダーで、賢さのあるプレースタイルと経験が、チームをさらに助けてくれる」と語っていたものである。
昨年12月21日のマインツ戦の前、長谷部の契約延長のアナウンスが場内に流されると、スタンドからは大きな歓声や拍手が起こった。観客のこのリアクションについても、長谷部も喜びを表わした。
「ファンに、そういう風に受け入れてもらえるというか、感じてもらえるのは、選手として非常に嬉しいこと。自分のなかでは、今シーズンもそうだし、先シーズンもそうですけど、ドイツに来てから一番、充実感があります」
「プレーヤーとして、経験とかそういうところで成熟度は増しているかなと。この2年くらいは、キャリアハイなのかなって感覚も正直あります。それを維持するんじゃなくて、これからさらに良くしていきたいと思います。今はやっぱり、サッカーをやっていて楽しいです」
なぜ、長谷部はコンスタントに活躍することができているのだろうか。
その理由は、難しい状況からでも立ち上がってくる姿勢にある。この姿勢こそ、長谷部が持っている最大の武器ではないだろうか。
かつて自身のブログで、尊敬する人生の先輩から贈られた言葉として「随所作主、立処皆真」という言葉を紹介し、「いつどこにいても、どんな立場でも、何者にも囚われず、常に主体性を持って一生懸命行動すれば、もうそこには真実がある」と説明していたことがあった。
勝っても驕らず、負けても腐らず。バイエルンと引き分けても淡々と試合を振り返り、自分のミスで負けても取り乱さない。
監督交代が日常茶飯事のプロサッカーの世界。そんなことも、長谷部にとっては学びの場なのだ。ヴォルフスブルク時代には、「僕は監督交代からいろんなことを学んだから。それに、こうした状況で得た大事な経験は、サッカー以外のところでも役に立つ」と前向きに捉えていた。
可能な限り冷静に現状を分析し、そこから改善策を見出し続けていく。派手さはない。だが、この当たり前のことを当たり前にやり続けていく強さが、彼にはあるのだ。
フランクフルトは、怪我人の影響と他チームから研究されたことで、ここのところ勝利から見放されている。このような状況では、選手たちに焦りが出てくるのも当然だろう。
だからこそ、コバチ監督が「彼が試合をオーガナイズしてくれる。ボールを持っていても慌てない。彼がいることを嬉しく思う。今後も、チームに安定感をもたらしてくれるに違いない」と絶賛する、長谷部のような存在がチームの浮沈の鍵を握るのである。
文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/ドイツ・フライブルク在住の指導者。2009年にドイツ・サッカー連盟公認のA級コーチングライセンス(UEFAのAレベルに相当)を取得。SCフライブルクでの研修を経て、フライブルガーFCでU-16やU-18の監督、FCアウゲンのU-19でヘッドコーチなどを歴任。2016-17シーズンからFCアウゲンのU-15で指揮を執る。1977年7月27日生まれ、秋田県出身。