「下心」をリークされたベッカム…英国民の反応と栄典制度の穴は?

カテゴリ:ワールド

山中忍

2017年02月14日

お偉い方の「下心」が見え隠れする栄典制度。

かつて師事したアレックス・ファーガソン(左)も「サー」の称号を貰い受けた一人。その姿を見ていたからこそベッカム(右)も叙任者として憧れを抱いたのかもしれない。 (C) Getty Images

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 中世以来の君主制に基づく英国爵位は、名誉以外にメリットがないと言われる。とはいえ同時に「レディー」の称号を得るヴィクトリア夫人を含む家族も名声にあずかるその名誉を、東ロンドン出身の“元庶民”ベッカムが欲しても無理はない。
 
 ベッカムは英国史上最高のサッカー選手とは言えないが、いわば過去最大の富と名声を得ることに成功した選手だ。そのネームバリューをロンドン五輪招致への協力や児童基金への支援など、国内外で社会貢献のために活かしてもいる。
 
 栄典制度に関しては、今世紀初頭に議会で「優れたサッカー選手や人気のポップスターが栄典に相応しいとは限らない」と警笛が鳴らされたが、アレックス・ファーガソン(元マンチェスター・U監督)やポール・マッカートニー(元ビートルズ)など叙任者あるいは候補者たちは、いずれも“有名人”の名前が並ぶ。
 
 そうした現状には、何より助言を行なう立場にある英国首相が狙うPR効果という「下心」も見え隠れする。百万円単位の報酬で、候補者としてノミネートを受ける過程を手助けするエージェントまで存在し、むしろ本格的に問題視されるべきは、こうした栄典制度の在り方だろう。
 
 ベッカム側はリークによるイメージダウンで諦めムードにあると伝えられているが、将来的な可能性は消滅していない。スポーツ界では自転車競技選手のブラッドリー・ウィギンスが、歳入関税庁のブラックリストに載っているとされながらも、2004年に「サー」の称号を得た前例もある。
 
 ウィギンスは侮辱発言で選定委員会を敵に回してはいないが、ベッカムは1998年のフランス・ワールドカップにおける退場処分で多くの国民を敵に回しても、努力とパフォーマンスを重ねて評価と人気を取り戻した実績の持ち主。スポーツ選手として人々に前向きな影響を与えたこの姿勢も、「サー・ベッカム」が誕生してもよい理由の1つに思えるのだが……。
 
文:山中忍
 
【著者プロフィール】
やまなか・しのぶ/1966年生まれ、青山学院大学卒。94年渡欧。イングランドのサッカー文化に魅せられ、ライター&通訳・翻訳家として、プレミアリーグとイングランド代表から下部リーグとユースまで、本場のサッカーシーンを追う。西ロンドン在住で、ファンでもあるチェルシーの事情に明るい。
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