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【小宮良之の日本サッカー兵法書】“常勝”に向かうチームの前に立ちはだかる“驕り”の危険な罠

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2017年01月12日

メンタル次第――。思い上がった瞬間、チームは空洞化する。

マドリーのように“驕り”による苦い経験を現在に活かしているクラブもあるが、このような経験はしないに越したことはない。写真は昨年末のクラブW杯決勝。 写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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「選手はハリウッドスターのようになった」
 
 そう揶揄されたように、当時のマドリーには明らかな驕りが感じられた。クラブがそれを助長したということもある。クロード・マケレレのように、地味だがプレーを補完できる選手は放出してしまっていた。
 
「まるで、タイヤのないフェラーリだった」
 
 当時の監督、カルロス・ケイロスは語ったが、スター選手は過信を強めていた。CL敗退後、マドリーはクラシコで惨敗して5連敗。リーガ・エスパニョーラでも優勝も逃している。彼らは“驕り”に内部から食い尽くされたのだ。
 
 フットボールはデリケートで、メンタル次第のスポーツである。「最強」と思い上がった瞬間、チームは空洞化する。
 
 マドリーの場合、フロントがスター軍団として脚色し、マーケティングでは成功したが、タガが外れ、戦う集団ではなくなってしまった。
 
 しかし、マドリーはその強さと驕りを経験しているからこそ、たわむことのない戦いを見せる。昨年末のクラブワールドカップ決勝の鹿島アントラーズ戦のように、倒れそうで倒れない。それが、ジダンが監督になってからの歴史的な無敗記録更新に繋がっている。
 
 たとえ勝てなくとも負けず、追い込まれた時ほど、自力を引き出すことができるのだ。その姿は、まさに「常勝」である。
 
 Jリーグで、それに一番近いのは鹿島だ。彼らは調子を落とすこともあるし、波もある。しかし、下げ止まるし、そこからの巻き返しは力強く、そこにこそ彼らの真価があるのだろう。
 
 もっとも、クラブは常に危うさに身を晒している。
 
「驕れる者は久しからず」
 
 改めて、勝負に関わる全ての人間が肝に銘ずるべき格言だろう。
 
文:小宮 良之
 
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『おれは最後に笑う』(東邦出版)など多数の書籍を出版しており、2016年2月にはヘスス・スアレス氏との共著『「戦術」への挑戦状 フットボールなで斬り論』(東邦出版)を上梓した。
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