中東のアウェーゲームで試されるハリルジャパンの成熟度。
だが、戦況に応じて戦うことがハリルジャパンのスタイルなのだから、逃げ切りを図るための別の選択肢があってもいい。
ポゼッション――ボールキープだ。
「相手がウザいと思うぐらい、こっちが回さないといけない」
本田圭佑がそう語ったのは、10月のイラク戦後のことだった。ショートパスを繋いで揺さぶり、相手がゴール前に張り付かざるを得ないほどの圧力で押し込んでいく。
本田が語ったのは、攻撃についてだったが、ボールを保持するポゼッションは攻撃のためだけのものではない。守備においても、その効力を発揮する。ボールを保持していれば、相手は攻めようがないからだ。
かつて日本代表も、そんな老獪な相手と対戦したことがある。2012年10月、ポーランドのヴロツワフで対戦したブラジル代表だ。
この時のブラジルは「ポゼッションか」「カウンターか」という二元論では語れない多様性があった。
ザックジャパンに対してハイプレスを仕掛け、中盤でも激しく囲い込んできたブラジル代表は12分に先制点を奪った直後、戦い方を変えた。自陣で守備ブロックを築き、前線の4人――フッキ、オスカール、ネイマール、カカに素早くボールを預け、速攻を繰り出すようになったのだ。
さらに26分、48分とゴールを重ね、安全圏に入ったブラジル代表は、再び戦い方を変更した。今度は日本陣内でボールを回し始めるようになったのだ。それは必ずしもゴールを狙うためだけではない。日本を揺さぶるためであり、ボールをキープして日本に攻撃の機会を与えないためでもあった。
戦況と時間帯に応じて、前からのプレス、リトリートからの速攻、多目的のポゼッションを使い分けたブラジル代表はまさに試合巧者。あの日のブラジル代表こそ、ハリルジャパンの目指す理想形だろう。
最終予選は来年3月から後半戦に突入する。リードして試合終盤を迎えた中東でのアウェーゲームで、パスを繋いで相手を焦らし、時間を消費させることができたなら、ハリルジャパンもいよいよ“大人のチーム”の仲間入りをすることになる。
文:飯尾篤史(スポーツライター)
ポゼッション――ボールキープだ。
「相手がウザいと思うぐらい、こっちが回さないといけない」
本田圭佑がそう語ったのは、10月のイラク戦後のことだった。ショートパスを繋いで揺さぶり、相手がゴール前に張り付かざるを得ないほどの圧力で押し込んでいく。
本田が語ったのは、攻撃についてだったが、ボールを保持するポゼッションは攻撃のためだけのものではない。守備においても、その効力を発揮する。ボールを保持していれば、相手は攻めようがないからだ。
かつて日本代表も、そんな老獪な相手と対戦したことがある。2012年10月、ポーランドのヴロツワフで対戦したブラジル代表だ。
この時のブラジルは「ポゼッションか」「カウンターか」という二元論では語れない多様性があった。
ザックジャパンに対してハイプレスを仕掛け、中盤でも激しく囲い込んできたブラジル代表は12分に先制点を奪った直後、戦い方を変えた。自陣で守備ブロックを築き、前線の4人――フッキ、オスカール、ネイマール、カカに素早くボールを預け、速攻を繰り出すようになったのだ。
さらに26分、48分とゴールを重ね、安全圏に入ったブラジル代表は、再び戦い方を変更した。今度は日本陣内でボールを回し始めるようになったのだ。それは必ずしもゴールを狙うためだけではない。日本を揺さぶるためであり、ボールをキープして日本に攻撃の機会を与えないためでもあった。
戦況と時間帯に応じて、前からのプレス、リトリートからの速攻、多目的のポゼッションを使い分けたブラジル代表はまさに試合巧者。あの日のブラジル代表こそ、ハリルジャパンの目指す理想形だろう。
最終予選は来年3月から後半戦に突入する。リードして試合終盤を迎えた中東でのアウェーゲームで、パスを繋いで相手を焦らし、時間を消費させることができたなら、ハリルジャパンもいよいよ“大人のチーム”の仲間入りをすることになる。
文:飯尾篤史(スポーツライター)