後半のゲームプランでは、本田でなければならない“質”が生きたのも事実だ。
ところが、チャンスは終わっていない。原口からボールを受けた長友佑都が、本田とのパス交換から、裏のスペースへ飛び出す。本田のワンタッチパスを受けると、サイドを深く崩して中央へ折り返し、ニアサイドの香川を経由。最後は原口がシュートをねじ込んだ。
後になって、このシーンを見返すと、最初の山口の長い飛び出しは、サウジアラビアのDFに対応されている。本田が無理にスルーパスを出しても、山口がそこを突破するのは難しかっただろう。カウンターをやめて、攻撃をスローダウンさせた判断は、実は正しい。
付け加えるなら、後半のゲームプランは、試合をコントロールすること。むやみにボールを失ってはならない。このスルーパスをやめた判断には、本田の経験が生きている。
そして、もうひとつ。
駆け抜ける長友へ出したパスも、巧みな駆け引きがあった。本田は長友からのパスを足下に止めるふりをしたが、しかし、身体の正面では止めず、ボールを左半身へ流した。そして、左足を伸ばしてワンタッチパス。たった1歩分のスルーである。しかし、この小さなフェイントが、寄せてくるサウジアラビアのDFをずらし、縦のコースを作り出した。そこへワンタッチでスルーパスを通す。絶妙な駆け引きだった。
速さと、質。速さはよく見えるが、質は見えにくい。
たしかに、投入直後の本田のプレーは、危なっかしいものだった。前半のゲームプランに居場所がないのも明らかだ。しかし、後半のゲームプランについては、本田でなければならない“質”が生きたのも事実である。定位置はなくなったが、カメレオン采配の下、これからも本田の力は必要になるはず。
新しい日本代表の時代が、確実に動き始めている。これでザックジャパン以降、どんな相手、どんな試合展開でも、必ず出場を続けているのは吉田麻也くらいだ。いつ、誰が出てもおかしくない。そんな雰囲気に包まれている。
最終予選は来年3月に行われるアウェーのUAE戦まで、少し間が空く。このポジティブな競争ムードで、それぞれがクラブに戻れば、空白の4か月が中身の濃いものになるのは想像に難くない。
実に得るものが多い、サウジアラビア戦だった。勝ったから、そんなことが言える。
文:清水英斗(サッカーライター)
後になって、このシーンを見返すと、最初の山口の長い飛び出しは、サウジアラビアのDFに対応されている。本田が無理にスルーパスを出しても、山口がそこを突破するのは難しかっただろう。カウンターをやめて、攻撃をスローダウンさせた判断は、実は正しい。
付け加えるなら、後半のゲームプランは、試合をコントロールすること。むやみにボールを失ってはならない。このスルーパスをやめた判断には、本田の経験が生きている。
そして、もうひとつ。
駆け抜ける長友へ出したパスも、巧みな駆け引きがあった。本田は長友からのパスを足下に止めるふりをしたが、しかし、身体の正面では止めず、ボールを左半身へ流した。そして、左足を伸ばしてワンタッチパス。たった1歩分のスルーである。しかし、この小さなフェイントが、寄せてくるサウジアラビアのDFをずらし、縦のコースを作り出した。そこへワンタッチでスルーパスを通す。絶妙な駆け引きだった。
速さと、質。速さはよく見えるが、質は見えにくい。
たしかに、投入直後の本田のプレーは、危なっかしいものだった。前半のゲームプランに居場所がないのも明らかだ。しかし、後半のゲームプランについては、本田でなければならない“質”が生きたのも事実である。定位置はなくなったが、カメレオン采配の下、これからも本田の力は必要になるはず。
新しい日本代表の時代が、確実に動き始めている。これでザックジャパン以降、どんな相手、どんな試合展開でも、必ず出場を続けているのは吉田麻也くらいだ。いつ、誰が出てもおかしくない。そんな雰囲気に包まれている。
最終予選は来年3月に行われるアウェーのUAE戦まで、少し間が空く。このポジティブな競争ムードで、それぞれがクラブに戻れば、空白の4か月が中身の濃いものになるのは想像に難くない。
実に得るものが多い、サウジアラビア戦だった。勝ったから、そんなことが言える。
文:清水英斗(サッカーライター)